2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730238
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
横井 和彦 同志社大学, 経済学部, 准教授 (80351279)
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Keywords | 国有企業改革 / 日中比較 / 派遣労働 / 国鉄民営化 |
Research Abstract |
中国における企業の役割と労働者の位置づけの変容を探る一環として、2008年施行の「労働契約法」においてはじめて規定された中国の派遣労働を、日本の「労働者派遣法」の由来・変遷と比較しながら検討した。その結果、派遣労働の位置づけは日中両国においてほぼ違いはないが、それを規定する法規のねらいは、まったく正反対であることが明らかとなった。すなわち日本では企業経営者の立場に立って、雇用の多様化つうじて人件費を削減することをめざしたものであるのに対して、中国では労働者の利益が守られていない現状のなか、労働者の利益を少しでも守ることをつうじて社会の安定をめざすための一つの方法として派遣労働を規定しているのである。 さらに国有企業の民営化の特徴をさぐる一環として、日本の国鉄の民営化を検討した。その結果、国鉄の民営化には二つの特徴があることが明らかとなった。第一の特徴は、改革を分割して行ったことである。最終的にまず国鉄を、債務を清算する清算事業団と実際の業務を行う会社に分割することを選択し、さらに業務を行う会社を旅客と貨物に分け、そのうえ旅客は地域ごとに分割した。この方法により、複雑な企業改革を単純化させ、さらに各社の実情に合わせた改革を進めることができたと考えられる。 第二の特徴は、民営化を段階的に実施したことである。すなわち(1)1983年12月の仁杉国鉄新総裁就任~1986年の「JR会社法」公布までの思考討論期、(2)1986年~1987年3月31日までの準備期、(3)1987年4月1日のJR各会社正式運営開始以降の転換期、の3期に分けて民営化を進めた。しかもJR各会社が正式に運営しはじめた後も十数年を要して、ようやく経営状況が比較的よい本州の3社から、すなわちJR東日本が2002年に、JR西日本が2004年に、JR東海が2006年に完全民営化された。経営状況が依然としてきびしい三島会社(JR北海道・JR四国・JR九州)とJR貨物の民営化は依然として大きな進展をみせてはいない。
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Research Products
(2 results)