2011 Fiscal Year Annual Research Report
経営学における効率性・市場・技術概念の理論的・経験的検討:制度派組織論の視点から
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21730299
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松嶋 登 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (10347263)
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Keywords | 制度 / 実践 / 効率性 / 市場 / イノベーション / 官僚制 / 経営学方法論 |
Research Abstract |
本年度は、当初の研究計画に照らしつつも、新たに機会を得た調査研究を発展的に推進するとともに、研究成果の国内外に向けた発信を積極的に行ってきた。 まず、昨年度より継続している、シャープの緊急プロジェクトに対する綿密なフィールド調査について、方法論的含意をもとにした研究成果をまとめ、日本情報経営学会の招待講演にて報告を行い、学術雑誌にも公刊した。また、現在、海外の査読つき雑誌に投稿する準備を進めている。 次に、イノベーションを捉える枠組みとして、既存のイノベーションに共通する理論前提に対する考察を行い、その社会的含意を問うべく、実務家を読者として想定された『ビジネス・インサイト』誌にて発表した。その上で、制度派組織論の含意を組み込んだアルドリッチの進化論アプローチに関する概念枠組みの再検討と、その枠組みに基づいた事例分析を学術雑誌に公刊した。この研究成果も、現在、海外の査読つき雑誌に投稿する準備を進めている。 その他にも、過去の調査研究である都立病院における電子カルテ導入事例を、バーナードの公式組織を通じた自律的な環境適応モデルとして再分析して学術雑誌に公刊し、わが国の携帯電話産業で見られたガラパゴス化現象を国際技術標準への異種同型化(国際技術標準の軽視ではなく、批准可能な国際技術標準によって生じた排他的な競争関係によってもたらされた差異化)として分析した研究成果を海外の学会にて報告するなど、研究成果の発表に努めてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は二つのフィールドワークを中心に研究計画を立てていたが、うち一つは終了し、もう一つは現在進行中でありながら、当初想定していなかったリサーチサイトを得たことによって、研究目的自体は達成していると考えている。そういう意味では、当初の計画以上の進展も見られる。また、当初の研究計画に含まれていた大学院生の教育・指導を通じた学術論文についても順調に学術論文や海外の学会報告などで発表してきた。なお、当初の計画に織り込まれていた大学院生は、現在、研究機関の研究者となり、共同研究者へと成長している。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の課題は、効率性概念を巡るさらなる理論的精緻化である。本稿は、これまで制度派組織論や市場の社会学、さらには実践論的転回など、近年の社会科学に見られる先端的な議論にもとづきながら当該の概念を検討してきた。だが、効率性に対する理論的検討は、経営学における古典的議論、たとえばサイモンの限定合理性や、彼の議論に基づいたアンゾフの戦略概念においても既に検討されてきた。最終年度に当たる本年度は、こうした経営学の古典的研究を再検討することによって、本研究の理論的成果を経営学として統合して行くことにしたい。 第二の課題は、本研究が追求してきた方法論的含意をいっそう深化していくことである。本研究では、社会構成主義を徹底する立場から、現実の社会的形成を観察する研究者もまた、「同様に特殊である」という規範的なあり方を探求してきた。だが、その規範的なあり方についても、どこか記述的にのみ検討してきたと言わざるを得ない。現実の経営に様々な関わり方を探求しながら具体的なフィールドワークを蓄積してきた本研究の最終年度においては、本研究の方法論的含意もまた、現実の経営に関与する研究者の研究実践原理としてより具体化していくことが求められる。
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Research Products
(8 results)