2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本鉄鋼業の現場管理システムの形成史―口述記録を用いた現代史研究
Project/Area Number |
21730337
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Research Institution | Kochi Junior College |
Principal Investigator |
青木 宏之 高知短期大学, 社会科学科第二部, 准教授 (00508723)
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Keywords | 能力主義管理 / 人事労務管理 / 鉄鋼業 |
Research Abstract |
平成22年度は、鉄鋼業における1960年代前後の人事制度の変化についての研究を行った。日本の大手鉄鋼メーカーは、いずれもこの時期に資格制度を導入している。本研究では、F製鉄において1967年から実施された「職能制度」と呼ばれる資格制度の形成過程を明らかにするために、同社から提供された社内資料や労使の団体交渉資料の分析を行った。 資格制度は、日本の雇用システムの中において重要な役割を果たしており、長期雇用の下で知的熟練や企業特殊熟練を長期的に評価・促進するという意味での制度補完性を持っている。しかし、近年の成果主義の導入を契機に日本的雇用システムにおける制度補完関係の「変化」に関心が高まっている。本研究は、資格制度の形成期にさかのぼり、発生メカニズムを明らにすることを通じて、制度変化のダイナミズムについての理解を深めることをねらいとしている。 本研究の発見の一つは、資格制度導入の前提には、ブルーカラーの職務内容の質的変化があったということである。技術革新や生産管理の考え方の変化を通じて、従来よりもブルーカラーが大きな管理職能を担うようになっていた。そうした技能を評価するために資格制度が導入されていたのである。これは、先行研究において多様な側面から指摘されてきた日本におけるブルーカラーのホワイトカラー化という論点と深く関わっている。こうした働き方の大きな変化との関連を意識して、高度成長期における人事制度改革を理解する必要がある。 平成22年度は、予定通り以上の研究を完了することができた。基本的には執筆を終えており、平成23年度の早い時期に『賃金・人事制度改革の軌跡(仮)』の中に所収するかたちでミネルヴァ書房から出版される予定である。
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