2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本鉄鋼業の現場管理システムの形成史―口述記録を用いた現代史研究
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21730337
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Research Institution | Kochi Junior College |
Principal Investigator |
青木 宏之 高知短期大学, 社会科学科・第二部, 准教授 (00508723)
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Keywords | 鉄鋼業 / 人事労務管理 / 能力主義管理 |
Research Abstract |
平成23年度は、主に2つの課題に取り組んだ。第一に、人事制度についての研究である。この研究については前年度中に大部分の研究を終えており、今年度は出版に向けた編集・調整作業が中心であった。 第二に、オーラル・ヒストリーを活用した労働史研究についての方法論的研究を行なった。オーラル・ヒストリーの研究への利用については、近年、政治学や民衆史などの分野で活発な議論が行なわれており、労働史の分野においてもその可能性が模索されている。本研究では、労政、労働組合関係者、技術者、労働者などのオーラル・ヒストリーを作成し、それを研究に活用してきた。オーラル・ヒストリーを利用することのメリットと留意すべき点などを整理することは、こうした研究動向に寄与するものと考えられる。そこで、社会政策学会での発表、同学会誌における論文投稿を行なった。この論文では、次の点を指摘した。 筆者がこれまで行なってきた労政・労働組合関係者、技術者、労働者のオーラルからは、企業の管理制度の運用実態、技術開発のプロセス、経営合理化をめぐる組織内力学、組織文化,さらにそれらと関わる従業員の意識を明らかにすることができた。そうした発見は、制度や組織を形成する背景的要因の解明につながり、制度や組織のダイナミズムを明らかにする可能性を広げる。本研究の事例に即していえば、新日鉄には製鉄所間の競争メカニズムがあり、釜石製鉄所の経営合理化の局面においては、それは組織の存続を求める行動へと結びついた。また、釜石における従業員と地域社会との密接な関係は、従業員の製鉄所単位の利害意識を強めていた。こうした従業員の意識と行動が戦後の釜石製鉄所の経営合理化に影響を与え、釜石製鉄所の存続へとつながっていた。このような具体的事例からオーラル・ヒストリーの労働史研究への貢献の可能性を指摘した。
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Research Products
(3 results)