Research Abstract |
財務報告制度の起源を19世紀イギリス鉄道会計に求め,主要な鉄道会社の株主総会後に提出された報告書と関連資料をテキストマイニングで分析した。目的は,これまでの研究で想定していた会計変化に対する資金調達不確実性(資金不足)の影響を再検討することであった。資金調達不確実性を示すキーワード"closed"は.L&BR, LNWR, LB&SCRでは確認出来たが,GJRとGWRでは確認出来なかった。このような背景のもと,前者は後者に比較して積極的に複会計システム.減価償却実務,コストマネジメントを採用する傾向にあったことがわかった。また鉄道業におけるコストマネジメントの導入が一段落し,資金調達不確実性のピークが訪れた後,複会計システムの法制化が行われたこともわかった。 一方で,会計史研究にテキストマイニングを活用することは,最終的な結論付けには従来の歴史研究方法が必要だとしても,検索エンジンが活用され,分析結果が再現可能であることから,研究の網羅性・客観性を高めることにつながることがわかった。具体的には,当時の会社が重要視していた会計変化の中には先行研究が見過してきたものがあった,また会計変化には先行研究が主張してきた配当政策に加え資金調達不確実性(資金不足)の影響があったことを示唆出来た。後者は当時の会社も意識していなかった行動原理である。詳細な会計規定が存在しなかった時代の会計変化には経営者や株主の利害が直接反映された。これは現代の会計(方針)変化の本質にも通じ,これを検討することは会計のパラダイムを深化させることにつながる。 現在は,資金調達不確実性(資金不足)の影響の主張の客観性を高めるべく,事例研究を重ねている。一方でオンラインストレイジを構築し,これまでのメールで行ってきた遠隔地の共同研究者とのやり取りの効率化を達成した。次年度はWebシステムとテキストマイニングを活用した新しい共同研究方法の提案を行いたい。
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