2009 Fiscal Year Annual Research Report
島嶼地域からの疎開離散者に関する社会学的研究:小笠原・硫黄諸島を中心に
Project/Area Number |
21730400
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
石原 俊 Meiji Gakuin University, 社会学部, 准教授 (00419251)
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Keywords | 社会学 / 歴史社会学 / 小笠原 / 硫黄島 / 疎開 / ディアスポラ / 島嶼 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本軍によってアジア太平洋戦争の前線に置かれ強制疎開や軍務動員の対象となり、戦後も長らく故郷喪失と離散(ディアスポラ化)を強いられた小笠原諸島や硫黄諸島の人びとが、いかなる経験をくぐり抜けてきたのかを、歴史社会学的な手法により明らかにすることにある。本年度は、両諸島において強制疎開の対象となった人びとが、内地の疎開先においてどのように生き延びたのかを、インタヴュー調査と関連文献資料の収集・分析によって明らかにした。 インタヴュー調査に関しては次の作業を行った。夏期に小笠原諸島・父島におもむき、先住移民(外国系)の疎開経験者数名を対象に、当時の状況についてライフヒストリー調査を実施した。また、内地出身者の子孫(日系)として小笠原・硫黄諸島で生まれ育ち内地への強制疎開を経験した人たちを対象とする、インタヴュー調査も実施した、第一に、現在父島に在住している硫黄諸島出身者2名を対象に、戸別訪問による本格的なライフヒストリー調査を実施した。第二に、関東地方在住の方数名についても戸別訪問によって接触を試みた。 1944年に内地に強制疎開させられた小笠原・硫黄諸島の住民は、親戚や身寄りのある人は各地に離散したが、それ以外の人は東京都練馬区内の軍需工場の寮に入居し勤労動員の対象となるか、埼玉県武蔵嵐山に共同疎開した。敗戦後、先住移民の中にはその英語能力を活かして占領軍に雇用されるなどしたため生計の目途が立った世帯もあるようだが、内地出身者の子孫(日系)の疎開者のなかには、生活状態がさらに悪化した世帯が多かったようである。とりわけ本年度の収穫は、日系疎開者のうち生活に困窮した数十世帯が、栃木県那須地方に開拓農民として集団入植を試みたことが、インタヴューや文献資料によって明らかになった点にある。従来「外地」や「樺太」「満洲」などからの引揚者が戦後に内地で集団入植したことは知られているが、小笠原・硫黄諸島からの「引揚者」(強制疎開者)にこうした事例がまとまって存在した点は、ほとんど論及されてこなかったからである。
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