2010 Fiscal Year Annual Research Report
Perspective-Takingの基盤としてのワーキングメモリキャパシティ
Project/Area Number |
21730495
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 綾乃 東北福祉大学, 総合福祉学部, 講師 (10367576)
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Keywords | 社会系心理学 / 社会的認知 / ワーキングメモリ / 視点取得 / 思考抑制 / ステレオタイプ |
Research Abstract |
偏見や差別を引き起こす原因のひとつとして、ステレオタイプを用いた対人認知傾向がある。これまでに、ステレオタイプを用いた認知を抑制する方略としてPerspective-Taking(視点取得:PT)と思考抑制の効果が検証されてきた。PTは「その人物の視点、立場にたつこと」であり、思考抑制は意識的に「ステレオタイプを使用しないように努める」ことである。どちらの方略も、判断時に対象人物のステレオタイプ関連情報が活性化することが示されてきた。本研究では、注意資源の配分に関わる能力の個人差であるWorking Memory Capacity (WMC)がこれらの情報処理に及ぼす影響について検討した。実験では、ステレオタイプを用いた判断が行われやすい集団に所属している3名の対象人物を順番に提示し、彼らに対する認知判断を求めた。1人目の対象人物に対する判断を求める場合にのみ、PTあるいは思考抑制を行うことを求めた。また、比較のために統制群を設定した。その結果、1人目の人物に対しては、PTよりも思考抑制を行った場合にステレオタイプに基づいた判断が抑制されることが示された。また、WMCの個人差と抑制方略の影響は、2番目に提示された対象人物に対する認知判断において認められた。WMCが豊富な者は、2人目の人物に対しても、PTおよび思考抑制方略を用いた判断を行っていた。しかしながら、WMCが乏しい者では、このような差は認められなかった。これらの結果から、ステレオタイプを抑制するために用いられる方略の効果だけではなく、方略の持続性に対してもWMCの個人差が関与している可能性が考えられる。WMCがPerspective-Takingを行う際の認知基盤として機能していることが示唆されたといえる。
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Research Products
(2 results)