2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730500
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
谷田 林士 大正大学, 人間学部, 講師 (50534583)
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Keywords | 他者理解 / 共感性 / 利他行動 / 囚人のジレンマ / 眼球運動 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、行動予測に関する「シミュレーション理論」と「理論理論」という哲学で用いられている区別を導入することで、相手と同じ感情を喚起する想像的共感と、視点取得のそれぞれが、異なる社会的適応課題の解決に役立つことを明らかにすることにあった。想像的共感に関しては、他者の表情などを通じて自動的に相手と同じ感情を喚起する他者志向的情動反応との関連が予想されるため、本研究では、想像的共感の予測プロセスが、シミュレートされた情動反応を用いる、すなわち、他者の置かれた状況に身をおくことで生起する自身の感情を相手に投射するという「シミュレーション」を用いて相手の行動を正確に予測できるかどうかを検討する。平成23年度は、最終年度として、「シミュレーション」を通じて相手の感情を取り込む程度に関する、表情情報探索時の眼球運動を用いた心理学実験を実施した。この参加者は前年度に、囚人のジレンマ実験に参加しており、他者の行動に関する予測の正確さが測定されていた。心理学実験では、眼球運動測定装置を用いて表情読み取り時の注意配分を測定し、他者志向的情動反応および想像的共感性との関連を調べるだけでなく、囚人のジレンマにおける行動予測の正確さといった指標を併せて分析した。対人場面における注視を分析した結果、情動的共感性が高い人ほど顔に対して注意が強く向けられていることが示されており、情動的共感性を基盤として、シミュレートプロセスの前提となる、他者の感情の取り入れが行われている可能性が示唆されている。ただし、認知的共感性の一つである想像的共感に関しては、顔のみに注意を払う比率のみと関連していた。この対人場面で顔を中心に注意を配分する比率は、行動予測の正確さと関連していたことから、これらの関係を整理し、シミュレーション・プロセスにおいて想像的共感がどのように作用しているのかを他の指標等を用いて検討することが今後の課題となる。
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Research Products
(2 results)