Research Abstract |
研究全体では,末期腎不全治療法の選択・開始時のプロセスに着目し,治療継続期の2つの透析療法の患者(腎移植は透析治療を受療しつつ待機するので,透析療法者に含まれる)を対象に,回顧的に,治療の選択・開始時に患者なりの選択理由(各治療法の長所や短所)を見出していく心理的プロセスと,その際の医療者の適切な支援について明らかにする。具体的には,患者自身が認識する3治療法の長所および短所の傾向を明らかにする(研究1),患者が治療法を選択・開始する際に,選択理由を見出すまでの心理プロセスで生じる困難と,困難を乗り越えるために医療者ができる心理的支援方法を検討する(研究2),調査結果を反映した支援ツールを作成する(研究3)の3点を目的としている。このうち平成22年度は(1)国際行動医学会において,研究1の成果を発表した。(2)研究3の予備検討として,透析医療に関わる専門家と協働して,治療法選択時の医療者の効果的な関わりに関する研修の試作を行い,ワークショップ形式で研修を実施した。(3)研究2については,調査会社に委託し患者調査を実施する計画であったが,質問紙を完成させ実施する時に東日本大震災が発生しため,透析療法は災害時に大きな影響を受けるため調査実施を見合わせ,2011年6月に実施した。人工透析患者687名を対象に調査研究を実施し,有効回答454名のデータについて,面接調査から抽出した各長所・短所の項目について,患者自身の主観的評定を求め,結果を両患者で比較した。各項目で比較した後,長所合計値,短所合計値を比較したところ,両治療法の患者とも,自分が継続している透析療法の長所を高く評定し,自分が受療していない透析療法の短所を高く評定することが示された。患者支援において,患者が自分の治療法に意味づけを行っているプロセスを考慮する重要性を示す結果であった。
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