Research Abstract |
平成23年度は,1)平成21~22年度に実施した研究成果の報告,2)治療法選択・開始の心理プロセスと必要な支援内容に関する調査検討,3)調査結果から得られた知見に基づき患者や医療者に役立つアドバイスを作成する,の3点を目的とした。1)まず,3つの学会において,平成21~22年度に実施した研究1,および研究2の成果を発表した。また,研究1および研究2の成果について論文を投稿中である。2)次に,東日本大震災の影響でH22年度から繰越した研究2について,人工透析患者687名を対象に調査研究を実施し,有効回答454名のデータについて,血液透析・腹膜透析療法の長所と短所の主観的評定を求め,結果を両患者で比較した。いずれの患者も,自分が継続している透析療法の長所を高く評定し,自分が受療していない透析療法の短所を高く評定していた。併せて透析療法の維持に関わる心理社会的変数を測定した。具体的には精神的健康(不安・抑うつ),対処行動,セルフ・エフィカシー,および疾患に関わるセルフケア実施程度と,セルフケアの実施に対して患者自身が抱いている認知的変数であった。これらについて多変量解析を行い,先行研究で明確な結論が得られていなかった情動中心対処の有意な影響を見出した。また,医療者へのサポート希求の高低によって,得られたサポートの効果が異なることを示した。3)最後に,患者や医療者向けのアドバイス作成については,研究成果をユーザーに伝えるため,NPO法人腎臓サポート協会のホームページと患者向け機関誌に成果の一部をわかりやすく紹介することができた。今後は作成した情報について専門家による評価を行い,改訂する必要がある。
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