2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730583
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
池上 将永 Asahikawa Medical College, 医学部, 助教 (20322919)
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Keywords | 実験系心理学 / 欲求不満状況 / 前頭前野 / 注意欠陥多動性障害 |
Research Abstract |
本研究の目的は、欲求不満状況における対処方略の個人差を、行動課題とNIRS(near infrared spectroscopy)を用いた前頭前野活動の計測を組み合わせることによって検討することである。平成21年度では、まず予備的検討として、一般的な言語流暢性課題および注意課題を行っているときの前頭前野活動をNIRSを用いて計測し、課題遂行に伴って前頭前野の活動が生じることを確認した。 次に、欲求不満を引き起こす実験的行動場面として報酬付きの反応時間課題を作成し、本課題を遂行しているときの前頭前野活動を計測した。この課題では、課題遂行成績に応じた報酬が与えられるブロックと、課題成績に釣り合わない少ない報酬が与えられるブロック(欲求不満状況)のそれぞれを実施した。その結果、前半のブロックでは、前頭前野の測定領域において酸素化ヘモグロビンの有意な増加が見られ、課題遂行に伴って前頭前野が賦活していることが示された。一方、後半の欲求不満状況では、前半に比べて酸素化ヘモグロビン量が有意に低下し、前頭前野の活動度が低下していることが示唆された。このときの主観的な感情状態を質問紙を用いて調べたところ、前半に比べて後半のブロックでは、不快感情の増加および快感情の減少、対処不能感の増加が統計的に有意に認められ、後半ブロックが実験参加者にとって欲求不満状況と感じられていることが示された。 前頭前野の活動とこれらの主観報告、および行動成績(反応時間)の関連を検討するために、酸素化ヘモグロビン量の変化を従属変数とし、反応時間および質問紙によって得られた主観的な感情(快感情、不快感情、対処不能感等)の変動を独立変数とした重回帰分析を行った結果、前頭前野の活動度(酸素化ヘモグロビン量)は反応時間、分配的注意、不快感情、覚醒度から予測されることが示された。以上のことから、本研究で用いた報酬付き反応時間課題が、欲求不満課題として妥当性を有することが示唆された。
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