2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730583
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
池上 将永 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20322919)
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Keywords | 実験系心理学 / 欲求不満状況 / 前頭前野 / 注意欠陥多動性障害 |
Research Abstract |
前年度では、行動指標および質問紙検査を用いた検討から、「報酬付きFlanker課題」における報酬呈示確率を操作することにより、妥当性のある欲求不満状況を生じさせることが確認された。本年度の目的は、前年度に引き続き、同様の課題を用いて欲求不満状況における前頭前野活動の特徴を明らかにすることであった。 健常な大学生30名を対象として課題遂行中の前頭前野を計測した結果、課題遂行成績に応じた報酬が与えられるブロック(報酬条件)と、課題成績に釣り合わない少ない報酬が与えられるブロック(欲求不満条件)のそれぞれで前頭前野背外側部におけるoxyHb量の有意な増加が確認されたが、欲求不満条件の方が賦活する範囲は小さかった。また、欲求不満条件では報酬条件と比較して、複数のチャンネルでoxyHb量の増加量が有意に少なかった。すなわち、欲求不満条件では、報酬条件と比べて前頭前野の活動度が低下していることが示唆された。また、報酬呈示条件(報酬条件と欲求不満条件)、および試行タイプ(congmentとincongruent)ごとに、反応時間および誤反応率を比較した結果、欲求不満条件ではいずれの試行タイプにおいても反応時間が有意に短縮していた。一方で、誤反応率に関しては報酬呈示条件と試行タイプの交互作用が見られ、欲求不満条件ではincongruent試行における誤反応率が有意に増加していた。すなわち欲求不満条件では、被験者の反応方略が速度重視にシフトし、エラーの生じやすいincongruent試行における正確度が有意に低下していた。課題遂行中の主観的な注意・感情状態については、注意の増加、不快感情の増加および快感情の減少、対処不能感の増加が統計的に有意に認められ、欲求不満条件が、実験参加者にとって主観的にも欲求不満状況と感じられていることが示された。さらに、前頭前野活動と性格特性(主要5因子)の関連を検討した結果、報酬条件においては、左前頭前野の一部のoxyHb量と開放性に正の相関が見られ、一方で欲求不満条件では右前頭前野の一部のoxyHb量と神経症傾向に負の相関が認められた。以上のことから、欲求不満状況と報酬状況で前頭前野活動の程度は異なり、また、それには性格特性の要因が関与していることが示唆された。
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