2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730604
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
上北 朋子 Doshisha University, 心理学部, 助教 (90435628)
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Keywords | 系列行動 / コミュニケーション / 海馬 / デグー |
Research Abstract |
本研究では時系列操作の脳機構を明らかにする前段階として、デグーにおける海馬破壊技術の確立と基礎データの収集を行なった。デグーは20種類以上の音声を状況別に使いわけ、コミュニケーションを行うことが報告されている。特に、思春期以降に雄が雌に対する求愛発声は、小鳥のさえずりのように、複数の音声を時系列的に並べる特徴がある。それ以前の発達段階においても、類似した発声を遊びの文脈において行なうが、その構造は成体雄ほど複雑ではない。このようにある程度学習的な要素を含む可能性のある時系列的発声の神経基盤を探るため、脳の特定部位を破壊し、発声行動の変化を調べた。本年度は、特定脳部位(海馬)破壊のための神経毒注入部位の座標の確立を行った。デグーとラットでは脳部位の大きさ、位置が異なるため、すでに報告されているラットの座標を用いることができない。まず、脳切片を作成し、脳アトラスを作成した上で、注入箇所の特定を行った。その結果、完全かつ精度の高い損傷が可能となった。 行動学的側面については、音声および非音声コミュニケーション行動を記録し、これらの行動に及ぼす海馬損傷の効果を検討した。対象とした行動は、音声コミュニケーションに関しては求愛歌および怒りの発声であり、非音声コミュニケーションに関してはグルーミング(他者に対する毛繕い)、喧嘩、コンタクトであった。海馬損傷により、求愛歌の構造の変化が起こる可能性が示唆されたが、データはまだ充分ではない。また、損傷後にはグルーミング行動が減少する結果が得られた。このように非音声、音声コミュニケーションともに、海馬損傷によって特に親和行動の変化が起こる可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)