2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730604
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
上北 朋子 同志社大学, 心理学部, 助教 (90435628)
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Keywords | コミュニケーション / 系列行動 / 空間認知 / 海馬 / デグー |
Research Abstract |
豊かな社会性をもつ齧歯類デグーを対象とし、彼らの認知能力を支える脳機構の解明を目的とした。動作を正しい順序で行い、他者の行動の順序性を理解することは、円滑なコミュニケーションに不可欠な能力であると言える。今年度の研究においては、動作系列に限定せず、広くコミュニケーションに関与する脳部位の特定を行った。具体的には、デグーの他者認知および物体認知に海馬の限局的な破壊が及ぼす効果を検討した。その結果、馴染個体との社会行動において、対他的グルーミング時間およびバッドリング(積み重なって寝る)時間の減少が見られ、海馬損傷が親和行動に影響を与えることが明らかになった。したがって、グルーミングからバッドリングへの移行のような行動系列が変化した可能性があるだろう。また、社会行動に影響を与える要因としてパートナーの要因を考慮し、海馬損傷後に新奇性の異なるパートナーとの社会行動を比較した。コントロール群では、新奇なパートナーと馴染のあるパートナーに対する社会行動に質的な違いが見られたが、海馬損傷群ではパートナーの新奇性に依存した社会行動の変化は見られなかった。そして、不安テストの結果は、このような障害が不安などの情動的側面の変化によりもたらされたのではないことを示した。物体認知については、ラットを用いた先行研究で海馬損傷の効果が示されている物体探索課題を用いて検討した。デグーの海馬損傷は、物体の配置についての空間認知障害を引き起こしたが、物体に対する馴化や新奇物体の検出には影響しなかった。これらの結果より、デグーの海馬は同種個体との社会行動場面では他者認知に関与し、対象が物体である探索場面においては物体認知ではなく空間認知に関与することが明らかになった。
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Research Products
(2 results)