2009 Fiscal Year Annual Research Report
韻律的特徴が伝達する言語情報処理における乳幼児の脳反応
Project/Area Number |
21730605
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 裕 The Institute of Physical and Chemical Research, 言語発達研究チーム, 研究員 (80415174)
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Keywords | 言語発達 / 韻律情報 / 近赤外分光法(NIRS) / 大脳半球左右機能差 |
Research Abstract |
本研究は、日本語の韻律的特徴処理に関して、韻律的情報が担う"語彙識別"と"パラ言語情報や非言語情報の伝達"の2つの役割を日本語獲得乳幼児がどのように分離して獲得するかを、脳活動の側面から解明する研究であり、本年度においては、主にピッチ(音の高さ)変化に着目した研究を遂行した。 4ヶ月児を対象に、自然に発話された単語「アメ(飴)」、「アメ(雨)」と、語末のピッチを上昇して発話された疑問形の単語「アメ?(飴?)」、「アメ?(雨?)」を用い、自然に発話された単語対疑問形単語でのピッチパタン変化に対する脳反応を近赤外分光法脳機能測定装置により測定した。その結果、ピッチパタン弁別における左右の聴覚野付近の反応を比較したところ、有意な左右差はみられなかった。この結果は、4ヶ月児の語彙識別に関与するピッチパタン変化に対する脳機能と、左右差が明確にみられない点で合致していた。このことは、4ヶ月児は、ピッチ変化それ自体には敏感であるが、語彙識別に寄与するピッチ変化パタンもパラ言語情報や非言語情報の伝達に関与するピッチ変化パタンも同様に処理している可能性を示唆しており、4ヶ月児では韻律的特徴が担う2つの役割をまだ分離して獲得していない可能性がある。また、パラ言語情報として伝達され得る様々な意図(「中立」、「感心」、「落胆」、「疑念」)を含む発話音声を聞いたときの脳反応がいかに変化するかを調べるため、4ヶ月児を対象にそれらの音声を聞いたときの脳反応を調べた。その結果、中立音声に比べて、感心、落胆、疑念音声を聞いたときの脳反応は増大していたものの、それら3つの音声に対する反応間では明確な差がみられなかった。 本研究はピッチ情報処理あるいはパラ言語情報処理に焦点をあて、また、それらに対する4ヶ月児の脳機能を明らかにした点で韻律的特徴処理の発達過程に関する重要な知見を提供した。
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