2010 Fiscal Year Annual Research Report
韻律的特徴が伝達する言語情報処理における乳幼児の脳反応
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21730605
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 裕 独立行政法人理化学研究所, 言語発達研究チーム, 研究員 (80415174)
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Keywords | 言語発達 / 韻律 / ピッチ / 近赤外分光法(NIRS) / 大脳半球左右機能差 |
Research Abstract |
本研究は、日本語の韻律的特徴処理に関して、韻律的情報が担う"語彙識別"と"パラ言語情報や非言語情報の伝達"の2つの役割を日本語獲得乳幼児がどのように分離して獲得するかを、脳活動の側面から解明する研究である。 本年度では、10ヶ月児を対象に、自然に発話された単語「アメ(飴)」、「アメ(雨)」と、語末のピッチを上昇して発話された疑問形の単語「アメ?(飴?)」、「アメ?(雨?)」を用い、自然に発話された単語と疑問形単語に対する脳反応を近赤外分光法脳機能測定装置により測定し、その脳反応を刺激間で比較した。また、単語音声に対してローパスフィルタによる処理を施した音刺激(LP刺激)を比較対照刺激として用いた。 その結果、疑問形に対する左右の聴覚野付近の反応を比較したところ、音声刺激、LP刺激のどちらに対しても有意な左右差はみられなかった。この結果は、昨年度の4ヶ月児における左右差に関する結果と合致していた。ただし、10ヶ月児においては、音声単語刺激処理においてのみ、右聴覚野付近に有意な反応が出現していた。このことは、4ヶ月児と10ヶ月児間で、疑問形に関与するピッチ情報処理における右聴覚野付近の脳反応に差が生じつつあることを示している。また、先行研究で語彙識別に関わるピッチ情報処理において、10ヶ月児が左優位の反応を示すことが報告されており、今回の結果と合わせて考えると、遅くとも生後10ヶ月では、"語彙識別"と"パラ言語情報や非言語情報の伝達"に関与するピッチ情報処理に対する脳反応が異なっていることが示唆される。本研究はピッチ情報処理に関する4ヶ月児と10ヶ月児の脳機能の一端を明らかにすることに寄与し、韻律的特徴処理の発達過程に関する重要な知見を提供した。
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