2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 正俊 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 特任助教 (30534052)
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Keywords | ゼータ関数 / 楕円曲線 / 解析接続 / 零点 |
Research Abstract |
本年度はこの研究のテーマの一つである数論的ゼータ関数の零点分布について一つの大きな前進が得られた。その成果は一般の半単純群の極大放物部分群に対して定義されるゼータ関数(発表・論文等では「(G,P)のゼータ関数」という略称を用いている)の零点に関するものである。このようなゼータ関数の零点分布について、それがRiemann予想の類似を満たすことは幾つかの実例について証明されていた。しかしながら、その証明を一般の半単純群の場合に拡張するには、従来の証明における手法を一般の半単純群の枠組みの中で意味付けた上で、新たな考察を付け加える必要があった。このような背景のもと、本年度、一般の(G,P)のゼータ関数に対して、それがある弱い意味でのRiemann予想を満たすことが証明できた。これは(G,P)のゼータ関数が内包するWeyl群による対称性を詳細に調べることにより成された。弱い意味での結果とはいえ、一般の(G,P)のゼータ関数についての成果が得られたことは、従来の少数の具体例についてしか結果が得られていなかった状況と比較して著しい進展である。またこの研究の中で、(G,P)のゼータ関数の幾何的に意味の分かりやすい表示が得られたことも、今後の更なる進展に対して意義深い。 一方、もう一つのテーマであった数論的ゼータ関数の解析接続と関数等式について、本年度は楕円曲線の正則モデルに付随するゼータ関数の境界項を調べることを行った。境界項の平均周期性はゼータ関数の解析接続と密接に関係するが、それと数論的ゼータ関数の解析接続を導くのに標準的に用いられる保型性(モジュラー性)との関係はよく知られていなかった。これについて、平均周期性と保型性との双対性を、適当な関数空間を具体的に構成することによって明示した。この成果は1次元アデール上の理論と高次元アデール上の理論の結びつき(特にゼータ積分)としても解釈でき、ゼータ積分による解析接続へのアプローチにおいて重要である。
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Research Products
(7 results)