Research Abstract |
本研究の目標は,リジッド空間(複素解析空間の非アルキメデス版)におけるエタールコホモロジーの理論とp進代数群の表現論,特に調和解析に関する理論を効果的に組み合わせて,Rapoport-Zink空間と呼ばれるリジッド空間のエタールコホモロジーを計算し,p進簡約代数群に対する局所ラングランズ対応,局所ラングランズ関手性への理解を深めることである.前年度までに進めてきた,リジッド空間におけるエタールコホモロジーの一般論に対する研究をもとに,本年度はシンプレクティック群GSp(4)およびユニタリ群U(3)に対するRapoport-Zink空間のエタールコホモロジーの研究を重点的に行った.研究は大域的な方法と純局所的な方法の双方から実施した.大域的な方法においては,志村多様体のp準一意化の理論や保型表現論における安定跡公式の理論を駆使することで,Rapoport-Zink空間のコホモロジーの超尖点部分をほぼ解明することができた.この結果は,Rapoport-Zink空間のコホモロジーの交代和に関するKottwitzの予想を含んでいる.一方,局所的な方法においては,昨年度に得Lefschetz跡公式と,軌道積分の移行などの調和解析の技術を合わせることで,Rapoport-Zink空間のコホモロジーの交代和として得られる仮想表現の正則楕円元における指標を計算することができた.これら2つの結果は相補的なものであり,これらを組み合わせることでさらに強い結果が得られることを期待している. また,上記の局所的な方法は,Lubin-Tate空間およびDrinfeld上半空間という古典的な場合に対しても新たな理解をもたらすことを発見した.特に,Drinfeld上半空間に対して上記の手法を適用することで,GL(n)とその内部形式の表現の間の対応を主張する局所Jacquet-Langlands対応の一部を,保型表現論とは独立に証明することに成功した.このような純局所的証明はこれまでGL(2)の場合にしか知られていなかったが,私の方法はGL(3)に対しても無条件に機能する.また,証明がコホモロジーを通した幾何的なものであるため,法1表現に対する場合や,より一般のp進代数群に対する場合にも,類似の手法によって新たなことを証明することができるのではないかと期待している.
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