2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740024
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中村 隆 東京理科大学, 理工学部・数学科, 助教 (50532355)
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Keywords | 値分布 / ゼータ関数 / 普遍性 / 強再帰性 / 多重ゼータ関数 / 無限分解可能性 |
Research Abstract |
次の論文の概要について述べる. [1]Applications of hybrid universality to multivariable zeta-functions [2]On universality of linear combinations of $L$-functions [1]と[2]はポーランドの若手数学者Lukasz Pankowski氏との共同研究である. [1]の論文において,エスターマンゼータ関数などの数論的関数に関連するゼータ関数,特別な概均質ベクトル空間のゼータ関数,2重又は3重Euler-Zagier型多重ゼータ関数の普遍性,特にパラメーターが有理数である場合を証明した.この論文により混合普遍性の全く新たな応用が見出された. 出版された順番は逆になっているが,[1]は論文[2]の続編である. [2]ではゼータ関数の一次結合を扱っていたが,この論文では多項式の場合を示した.それにより,多くの多重ゼータ関数が,条件付きではあるが普遍性をもつことが証明された.この論文では混合普遍性が証明の鍵となっている. 用語の解説をする.Euler-Zagier型多重ゼータ関数の発端はEulerによる1775年の論文である.これが再び注目されたのは1990年代に入ってからで,量子群や結び目不変量,数論幾何学など多方面との関連により,Euler-Zagier型多重ゼータ値,即ち変数が全て自然数である場合が注目されるようになった.Euler-Zagier型多重ゼータ関数の一般化であるWittenゼータ関数は量子ゲージ理論に関連してWittenにより定義され,Zagierが再定式化し,松本氏により多変数関数として再定義された.このWittenゼータ関数の特別な場合がTornheim多重ゼータ関数である. Riemannゼータ関数の普遍性とは,任意の零点を持たない正則関数はRiemannゼータ関数の虚部方向の平行移動$\zeta(s+i\tau)$により一様に近似でき,さらに近似できる$\tau$の密度は正になるという定理である.Riemann予想はRiemannゼータ関数が自己近似性を持つ,即ちRiemannゼータ関数の虚部方向の平行移動$\zeta(s+i\tau)$によりRiemannゼータ関数$\zeta(s)$が近似される,と同値である.混合普遍性とは,上記の普遍性とKroneckerの近似定理を組み合わせたもので,普遍性より強い性質である.普遍性と混合普遍性はRiemannゼータ関数だけでなく,Hurwitzゼータ関数,Dirichlet L関数などの,種々のゼータ関数について成り立つことが知られている.
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Research Products
(4 results)