2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740095
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 賢次 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40322200)
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Keywords | 非線形波動 / 大域動力学 / 散乱 / ソリトン / 爆発 / 中心安定多様体 / 基底状態 / ワンパス定理 |
Research Abstract |
非線形Klein-Gordon方程式、非線形Schrodinger方程式、非線形波動方程式について、全ての解の時空大域挙動の分類及び初期状態からの予測を目指す研究を行った(Wilhelm Schlag, Joachim Kriegerらとの共同研究)。非線形波動方程式の解は、大域的分散(散乱)、定常解、ソリトン、爆発など様々に異なる挙動を示す事が知られ、個々の場合や特殊解近傍の漸近的解析については非常に多くの研究がある。しかし、それら異なる挙動の解の相互関係や時間的遷移を、十分広い解集合(関数空間)において調べる研究はほとんど(完全可積分系など、そもそも解の挙動が豊富でない場合を除けば)無かった。今年度の研究では、初期状態について全エネルギー値上限だけの制限の下、上記3つの典型的挙動、すなわち散乱波・ソリトン・爆発解、及びそれらの時間的遷移を全て含む、9通りの解集合への分類に成功した。具体的には、基底状態ソリトンに対する大域的な中心安定多様体及び中心不安定多様体が、エネルギー空間内の超曲面として構成され、それぞれ時間正方向と負方向の挙動を散乱領域と爆発領域へ分割し、更に中心安定多様体上の解は分散波を放射し基底状態ソリトンへと漸近する事を示した。一番の鍵は、基底状態の近傍を通過した解は二度と戻ってこれないこと(ワンパス定理と呼ぶ)である。これを用いて一部の初期値に対しては明示的に大域挙動を予測する事もでき、そこから9個の解集合が其々無限個の軌道を含む事も示される。特に、これまで特殊な方程式を除き存在すら証明されていなかった、散乱から爆発への遷移解を、エネルギー空間で安定的に構成する事に成功した。またソリトン周りの中心安定多様体の構成については、これまで線形化作用素のスペクトルについて強い仮定が必要であったが、別証明によって球対称ソリトンについてはほぼ仮定を除去することに成功した。これにより、エネルギー集約を起こす系や、さらに高エネルギーの解についても分類が進む事が期待される。
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Research Products
(9 results)