2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740148
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
本田 敏志 京都大学, 理学研究科, 研究員 (20425408)
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Keywords | 光赤外線天文学 / 元素合成 / 化学進化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、未だに不明である金やウランと言った重い元素を合成するrプロセスの起源に迫ることと、rプロセスの銀河初期における振る舞いを明らかにすることによって、銀河系の化学進化史についての詳細な情報を得ることである。22年度は、すばる高分散分光器(HDS)を使って矮小銀河の超金属欠乏星S15-19の観測を行い、その化学組成を詳細に調べた。矮小銀河は銀河系のビルディングブロックの生き残りと考えられており、その中の金属欠乏星には銀河系形成時の情報が含まれると考えられる。これまでの観測によって、矮小銀河の星で唯一バリウムが過剰な超金属欠乏星S15-19が発見されているが、このバリウムがrプロセスによって合成されたものだとすると、銀河系で見られるrプロセス元素が過剰な星(r-II星)が矮小銀河にも存在することが確認できる。また、放射性元素であるトリウムなどが検出できれば年代学の適用なども考えられ、矮小銀河の形成についても極めて重要な手掛かりを得ることができる。しかしながら、我々の概測結果ではrプロセスによる元素合成の証拠となるユーロピウムが検出されなかった。さらに、この星は炭素過剰で連星系に属していると考えられる観測結果が得られたことから、この星のバリウムはrプロセスではなく、漸近巨星分岐(AGB)星によるsプロセス元素合成によって作られたものだと考えられる。この観測結果は、矮小銀河には銀河系のようなr-II星が存在せず、銀河形成初期での重い元素についての合成プロセスが、銀河系と矮小銀河で異なることを示唆している。ただし、このような観測例はまだほとんどなく、今後の追観測によって確認する必要がある。
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Research Products
(4 results)