2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子重力理論の一般的問題と非摂動論的かつ背景独立な定式化の研究
Project/Area Number |
21740157
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
永尾 敬一 茨城大学, 教育学部, 准教授 (10391731)
|
Keywords | 素粒子論 |
Research Abstract |
我々の時空がなぜ4次元で,宇宙はどのように始まったのか,といった根源的な間に答えるためには,重力を含んだ4つの力全てを統一した理論を構成する必要がある.その最有力候補とされているのが超弦理論であるが,背景依存で摂動論的にしか定式化されていないという問題点を抱えている.本研究においては,他の量子重力理論との対比も通じて,無矛盾な量子重力理論の非摂動論的かつ背景独立な定式化を目指すことを目的として研究を行った.特に,全ての量子重力理論に共通する一般的問題として,量子重力理論を構築しようとするとclosed time curveが現れてしまうという問題(CTC問題)が知られている.無矛盾な量子重力理論を構築するためには,CTC問題を回避することが必要不可欠である.この一つの方法が複素作用理論によるアプローチである.複素作用理論とは,通常の実数の作用を複素数にまで拡張した理論である.複素作用に対応するハミルトニアンは非エルミートとなる。私は、Holger Bech Nielsen教授と非エルミートハミルトニアンで記述される系の解析を行った。非物理的な量子状態の遷移が起こらないように適切な内積を定義し、また、十分な時間が経てば歪エルミート成分が抑制されエルミート成分のみが残ること、つまり、エルミートなハミルトニアンが自動的に得られることを示した。また、そのハミルトニアンが局所的な形で得られた場合には、保存する確率流密度が二種類の波動関数を用いて記述されることを示した。さらに、そのハミルトニアンを用いて過去の状態を調べることで、その評価を誤ってしまう可能性についても指摘した。この成果は、何らかの基礎的な理論においては、ハミルトニアンはエルミートである必要がないということを示唆している。
|