2010 Fiscal Year Annual Research Report
低次元電子格子系における時間分解光電子分光の理論研究
Project/Area Number |
21740222
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
JAE Dong Lee 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 講師 (50447695)
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Keywords | 時間分解光電子分光 / グラファイト / 電子・格子カップリング / ディラックフェルミオン / ブリュアンゾーンK点とH点 / 光誘起超高速動力学 / 非放射緩和 |
Research Abstract |
疑似2次元ギャップレス半導体であるグラファイトにおいての時間分解光電子分光(time-resolved photoemission spectroscopy (TRPES))の研究を理論的に行った。グラファイトは6角形の網の目状の炭素シートが規則正しく積層した化合物である。そして、産業上の多くの利用が期待されているフラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンの炭素基盤物質の種物質でもある。一方、グラファイト自体も、ディラックフェルミオンの存在、電子構造による独特な電子・格子の動力学、電荷移動特性等が観測できる興味深いシステムである。それで、特に、この疑似2次元グラファイトが持つ独特の電子構造とその電子・格子動力学との相互関係を明らかにするため、我々はグラファイトでの光誘起超高速動力学の研究を行った。この超高速動力学は、実験的には今まで主に時間分解光学反応によって研究されているのだが、最近もっとも注目されるのはTRPESだ。TRPESは最先端の分光技術で、その理論的接近もまた確立されない、まさに理論・実験ともに挑戦的な課題である。我々の研究では、TRPES理論の独自開発を通じて、グラファイトでの光誘起超高速動力学をTRPESで記述する新しい視点を示した。研究結果、非放射緩和(nonradiative relaxation)はグラファイトのブリュアンゾーン対称点によって違いがあり、ディラックフェルミオンが存在するH点よりK点で大きくなるのが分かった。この結果は有効な電子・格子カップリングがH点よりK点付近でもっと強いというのを意味する。関連論文はJournal of Electron Spectroscopy and Related Phenomenaに出版された。
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