2011 Fiscal Year Annual Research Report
現実的な鉛直乱流拡散の分布を組み込んだ深層海洋大循環像の提示
Project/Area Number |
21740345
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠藤 貴洋 九州大学, 応用力学研究所, 学術研究員 (10422362)
|
Keywords | 深層海洋大循環 / 鉛直乱流拡散 / 海洋大循環モデル / semi-prognostic法 |
Research Abstract |
前年度に実施した深層海洋大循環の数値シミュレーションの結果、水温.塩分の分布、子午面循環の流量ともに、鉛直乱流拡散係数の値のみならず、semi-prognostic法の適用強度に大きく依存してしまうことが明らかとなった。そこで平成23年度は、前年度と同様の設定のもとで、semi-prognostic法の適用強度やその空間分布、鉛直乱流拡散係数の値を様々に変え・た感度実験を行った。そめ結果、(1)semi-prognostic法に使用する参照値を作成する際に用いた鉛直乱流拡散係数と、数値シミュレーションで用いる鉛直乱流拡散係数が等しい場合、semi-prognostic法の適用強度に結果はほとんど依存しない(2)そうでない場合、semi-prognostic法の適用強度を大きくするほど、水温・塩分の分布が参照値に近づく一方で、子午面循環の流量は小さくなる、(3)semi-prognostic法の適用強度が非常に大きい場合、底層に参照値よりも密度の大きい水塊が形成されてしまうことが示された。(1)の結果より、組み込んだsemi-prognosticスキームそのものに問題がないことは明らかである。また(3)の原因は、密度成層の非常に弱い底層にsemi-prognostic法を強く適用した場合に、水温・塩分の参照値からのごくわずかのずれに対して非現実的な補企がかかってしまうためであることが判明し、適用範囲を密度躍層より浅い海域に限定することで解消されることがわかった。したがって(2)の結果より、現実的な鉛直乱流拡散のもとで観測された水温・塩分の分布を再現する子午面循環は非常に弱いということになる。本研究の結果ゆら、(A)地衡流計算、インバース法、診断・同化モデルにより推定された深層海洋大循環の流量が過大評価である、もしくは(B)これらの推定流量が、南極周極流域での活発な渦運動に伴う水平拡散など、鉛直乱流拡散以外の力学過程によって実現されている可能性が示唆された。
|
Research Products
(3 results)