2010 Fiscal Year Annual Research Report
「単一系」に立脚した磁気嵐数値モデルの開発と磁気嵐研究の新展開
Project/Area Number |
21740354
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
海老原 祐輔 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (80342616)
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Keywords | 磁気嵐 / リングカレント / 放射線帯 / シミュレーション |
Research Abstract |
地球磁場に捕捉されている全ての荷電粒子の輸送過程を把握することを目的とした新しいシミュレーションコードの開発を昨年度に引き続き継続して行った。このシミュレーションは以下の3つの特長がある。(1)数eVから10MeVという7桁ものエネルギー幅をシームレスに解くことができる。(2)非ダイポール磁場のもと粒子の移流を解くことができる。(3)磁気赤道面に固定した座標系を用いている。したがって、グローバルMHDシミュレーションによって表現された外部磁気圏モデルと結合し、より現実的な内部磁気圏の粒子環境を表現することが容易にできる。開発はほぼ完了し、実際の磁気嵐に相当する電場・磁場を与え、磁気嵐時における内部磁気圏荷電粒子の実空間・位相空間での時間発展を解いた。衛星によるその場観測と比較を早急に行う予定である。一方、リングカレントを構成する高エネルギーイオンが早く消失するという観測事実を説明するために、内部磁気圏と電離圏とが結合したシミュレーションを実施した。磁気嵐時のように夜側尾部の磁力線が大きく引き延ばされると磁力線の曲率勾配は小さくなる。イオンの旋回半径が磁力線の曲率勾配に匹敵するようになると、イオンの断熱不変量は保存されず、ロスコーンに入った粒子は電離圏へ降下し、プロトンオーロラを光らせる。この過程を採り入れたシミュレーションを初めて実施し、リングカレントが時定数約6時間で消失できること、プロトンオーロラの発光強度から求めた降下陽子のエネルギー率を概ね説明するなどの良好な結果を得た。電荷交換反応ではリングカレントの早い消失を説明できず、引き延ばされた磁力線によってピッチ角散乱を受けることがリングカレントの早い消失にとって本質的に重要であることを意味し、これは、リングカレントに対する新しい描像を与えるものである。
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