2010 Fiscal Year Annual Research Report
自然集合体に基づくペルム紀‐三畳紀コノドントの分類,進化,古生態
Project/Area Number |
21740368
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上松 佐知子 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 准教授 (50466661)
|
Keywords | コノドント / 自然集合体 / 三畳紀 / ペルム紀 / 分類 / 生層序 |
Research Abstract |
本研究では、ジュラ紀付加体中に含まれる珪質粘土岩からコノドント自然集合体を発見・記載し、後期ペルム紀から前期三畳紀コノドントの系統、分類、進化および古生態を解明することを目的としている。平成21年度は当初予定していた栃木県足尾山地の秋山川上流地域の試料に加え、カナダ西部のブリティッシュコロンビア州カシェクリークおよび岐阜県舟伏山地域から採取された試料について研究を行った。また平成22年度は引き続き舟伏山地域の試料採取を行い、また茨城県八溝山地においても野外調査を行った。以上の調査地域のうち岐阜県舟伏山地域と栃木県秋山川地域に分布する粘土岩から保存良好なコノドント化石を得ることができた。舟伏山地域からは最前期三畳紀を示すコノドント自然集合体が産出した。これらの集合体はHindeodus parvusおよびHindeodus typicalisに同定される。特に前者はペルム紀/三畳紀境界を定義することから層序学的に重要な種である。集合体にもとづき復元された硬組織器官は、M、S0~S3、P1およびP2エレメントを含む13エレメントで構成される。また堆積課程の考察から、これらのコノドントは遠洋・深海域の海底面近くに生息し、死後直接堆積物中に埋没したことが明らかになった。 栃木県秋山川地域からはコノドントエレメントの集積層を発見した。集積層には前期三畳紀の後期を示すNeostrachanognathus tahoensisが含まれる。岩相学的な考察にもとづき、コノドント集積層は海山のような地形的高まりからしばしば堆積物の流入する遠洋・深海域で形成されたことが明らかになった。また同時代の粘土岩を産する他地域との比較から、ペルム紀/三畳紀境界の後、前期三畳紀の間に遠洋・深海域では海洋貧酸素状態がしばしば発生し、そのような水塊が時には中層まで発達していたことが示された。
|