2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740390
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
薮田 ひかる 大阪大学, 理学研究科, 助教 (30530844)
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Keywords | 惑星起源・進化 / 隕石 / 希ガス / 炭素物質 / 軟X線 / X線吸収端近傍構造 / 走査型透過X線顕微鏡 / Phase-Q |
Research Abstract |
隕石中の「惑星型」希ガスのうち重い希ガスの大部分を占める"Qガス"は、隕石の酸処理で得られる化学残渣に含まれる炭素物質をその担体"Phase-Q"とすることが知られる。しかし、Phase-Qがどのような性質・構造を持つ炭素物質であるかについては殆ど明らかにされていない。Amari et al(2003)によると、炭素質コンドライトのAllende隕石を物理的に分離した炭素物質のうち、密度が約1.65g/cm3の画分(C1-8D)にQガスが2.5倍濃集する。前年度の研究では、C1-8DをX線吸収端近傍構造(XANES)分光法で分析し、他の密度の画分や化学残渣との比較を行ったところ、C1-8Dはsp^3炭素に富む物質であることが示唆された。今回は、Qガスに富む物質(化学残渣、AMD1)と、Qガスに乏しい物質(化学残渣をニクロム酸ナトリウムで酸化処理したもの,AMD2)のXANES分析を行い、それらのスペクトルを比較した。その結果、AMD2ではAMD1に比べて、芳香族炭素、脂肪族炭素の相対量が共に少なかった。一方、カルボニル炭素はAMD2で若干高かった。しかし、グラフェン構造の相対量はAMD1、AMD2で違いが見られないことが判明した。このような、AMD1とAMD2の間の分子構造的相違は、Phase-Qそのものを直接反映するものではなく、Phase-Qが含まれている母体である、有機高分子の官能基組成が酸化作用により変化したものであると考えられる。そうはいっても、有機高分子の構造変化がQガス放出に関与している可能性な期待できる。また、酸化前後でグラフェン構造が定量的に変化しなかったことから、グラフェンはPhase-Qと関係がないという、絞りこみを行うことができた。
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Research Products
(12 results)