2010 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子集合化による蛍光変化をプローブとした結晶核生成初期過程の研究
Project/Area Number |
21750021
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊藤 冬樹 信州大学, 教育学部, 准教授 (80403921)
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Keywords | 有機分子集合体 / 蛍光スペクトル / 有機結晶 / ペリレン誘導体 / 高分子薄膜 / 結晶核生成 |
Research Abstract |
分子間力によって形成されているナノサイズの有機結晶では,その特有のサイズ効果を示すことが知られている.我々はポリビニルアルコール(PVA)薄膜中においてピレン誘導体の色素濃度の増加にともなう蛍光スペクトル変化を見出した.本研究では,色素凝集サイズに対する蛍光スペクトル変化と結晶成長過程との関連について検討することを目的としている.今年度は,ピレンより芳香環の大きなペリレンアンモニウム誘導体を新規合成し,その水溶液中およびPVA薄膜中における蛍光特性について検討した.トリメチル-(2-オキソ-1-ペリレン-1-イル-エチル)アンモニウムブロマイド(PeryAm)は,塩化アルミニウムを触媒とするペリレンと2-ブロモアセチルクロライドとのFriedel-Crafts反応で合成した1-(2-ブロモアセチル)ペリレンに,トリメチルアミンガスを通じることで4級化した.合成したPeryAmの光物理化学特性について検討した.水溶液におけるPeryAmの吸収スペクトルは濃度依存性をほとんど示さなかった.一方,蛍光スペクトルは濃度の増加にともなって470nmの発光に加えて600nmに強い発光を示した.次に,PVA薄膜中での蛍光スペクトルの濃度依存性を検討した.低濃度領域において,主に470nmからの発光と520nm付近に肩を有するスペクトルを観測した.また,高濃度領域では,470nmの発光に比べ,長波長側に観測される発光強度は増加した.さらに長波長側の蛍光ピーク波長は濃度の増加に伴い長波長側ヘシフトした.このシフトは,PVA高分子中に捕捉されたPeryAm会合体のサイズに依存しているものと考えられる.この挙動は,以前に報告したピレンアンモニウム誘導体でのスペクトル変化とは異なる.PVA薄膜中で形成されるこの凝集体は,溶媒の蒸発による結晶成長を高分子媒体の網目構造によって凍結したものに対応すると考えられる.今後,蛍光顕微鏡を用いて蛍光スペクトル変化をプローブとした結晶形成初期過程のダイナミクスを検討していく.
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Research Products
(8 results)