2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子の光や磁場に対する外場応答制御に向けた高精度分子理論の開発
Project/Area Number |
21750028
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
倉重 佑輝 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (30510242)
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Keywords | 量子化学 / 電子状態理論 / 分子物性 / 光学応答 / 磁場応答 |
Research Abstract |
本研究の目的は,大規模分子系の機能制御を目指した新規応答特性計算法の開発を行うことである.応答現象の詳細は電子波動関数の高次の情報に基づくため,電子状態計算に基づく第一原理的な予測が重要となるが,計算負荷の高さから数千原子系にも適用可能な信頼性の高い手法は確立されていない,これまで培ってきた大規模分子系の電子状態計算法の技術を大きく発展し,高次の外場応答特性計算へと進化させる.本年度は計画の通り,核座標変化の低次応答物性に対応するエネルギー核座標微分を開発した.エネルギー核座標微分は最も使用頻度の高い電子状態計算の応用例であり,構造探索や反応エネルギーの計算に用いられ,自由度の多いナノスケール分子に於いて不可欠である.また同時に,開殻系や励起状態,金属含有系にしばしばみられる,通常の電子状態理論では扱う事が困難な複雑な電子状態に対する理論の開発を行った.強相関電子系の理論である密度行列繰込み群アルゴリズムを用いて,有機磁性体であるポリカルベンの高スピン状態の安定性を調べたところ,従来の電子状態計算法による予想とは全く逆に,カルベン鎖が伸びるほど高スピン状態と低スピン状態のエネルギー差は狭まり,高スピン状態の安定性が失われる事が分かった.よって大規模分子系の機能予測には前者の大規模な分子系に適用可能な理論,後者の複雑な電子状態に適用可能な理論の開発が共に不可欠であると考えられ.それには反応中心とその周りの骨格部分というように多層性をもった理論への発展が必要とされる.
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Research Products
(7 results)