2009 Fiscal Year Annual Research Report
近接アセチレンの渡環環化反応を利用したゼトレン誘導体の合成とその物性評価
Project/Area Number |
21750046
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
梅田 塁 Kansai University, 化学生命工学部, 助教 (70467512)
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Keywords | 多環式芳香族化合物 / アセチレン / 渡環環化反応 / ゼトレン / デヒドロアヌレン |
Research Abstract |
本研究では、1950年代に合成が達成されたゼトレンに注目し、ジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンの近接アセチレンの高い反応性を利用するという、新規なアプローチでゼトレン誘導体の合成とその物性について明らかにすることを目的に研究を行った。本年度は、ゼトレン前駆体となるジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンの合成法を確立する目的で、種々の前駆体を用い、検討を行なった結果、ジヨードナフタレンとトリメチルシリル基が置換したジエニチルナフタレンを系中でシリル基を除去しながらカップリング反応を行なうことにより、低収率ながらこれまで全く合成が達成されていなかったジナフト[10]アヌレンを得ることができた。この時、添加剤として水酸化ナトリウム水溶液を用いることで、収率は向上することが分かった。ジナフト[10]アヌレンの^1H NMRおよび単結晶X線結晶構造解析および計算化学について検討を行ない、その芳香族性について調査した結果、10員環を有するものの、全く芳香族性を示さないことを明らかにした。次に、ジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンから、7,14-二置換ゼトレンへの渡環環化反応の検討を行なった。ハロゲンの三重結合への付加反応に着目し、手始めに臭素を用いて反応を行なったところ、期待した渡環環化反応がおこり、7,14-ジブロモゼトレンが得られたが、この時、モノブロモゼトレンならびに、さらに臭素化が起こった3および4置換プロモゼトレンも得られることが分かった。反応にヨウ素を用いて検討を行なったところ、溶媒にクロロホルムを用いたときに中程度ながら選択的に7,14-ジヨードゼトレンを得ることができた。ジヨードゼトレンに対して、アセチレン誘導体とのPd-Cu触媒を用いたカップリング反応を行なったところ、速やかに反応が進行し、目的のジエチニル置換ゼトレンを得ることができた。さらに、その電気化学測定を行なったところ、1電子の可逆的な酸化および還元波が観測され、2電子目は、不可逆な酸化および還元波が観測された。
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Research Products
(4 results)