2009 Fiscal Year Annual Research Report
含フッ素アミノ酸のペプチドナノチューブよりなる新規人工イオンチャネルの創成
Project/Area Number |
21750137
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石田 康博 The Institute of Physical and Chemical Research, 複合ソフトマテリアル研究チーム, チームリーダー (20343113)
|
Keywords | ssアミノ酸 / フッ素化アミノ酸 / 不斉合成 / ペプチド / 大環状化合物 / イオンチャネル / 水素結合 |
Research Abstract |
本研究では、環状オリゴペプチドを基本モチーフとし、その骨格中に含フッ素ssアミノ酸を導入することで、構造の単純性・機能改変の可能性・分析の容易性に優れた人工イオンチャネルの開発を目指している。本年度は、ssアミノ酸ペプチドの環状4量体を合成し、その構造解析を行うことを目標に研究を行った。 本研究を申請した時点で、ss位にペルフルオロアルキル基を持つssアミノ酸の実践的な不斉合成法を概ね確立していたが、収率や再現性に難のあるステップが存在していた。この段階の実験手法を最適化することにより、光学的に純粋な含フッ素ssアミノ酸を数十グラムのスケールで再現よく合成することが可能となった。また、この含フッ素ssアミノ酸の縮合反応の条件を最適化することにより、N末端およびC末端のいずれの方向においても良好な収率でペプチド結合を形成する手法が確率された。これらの合成法を用いることにより、ss位にトリフルオロメチル基を持つssアミノ酸ならびに(R)-ホモアラニン(=左記の含フッ素アミノ酸のフッ素原子を水素原子に置き換え、さらに不斉炭素の立体を反転させたアナログ体)を交互に縮合した鎖状4量体を合成し、その両末端を脱保護した後に希薄条件下にて縮合反応を行うことにより、ペプチドの環状4量体を得た。 得られた環状4量体の単結晶X線結晶構造解析を行ったところ、アミドの水素結合が3次元状に広がったネットワーク構造を自発的に形成することが明らかとなった。フッ素を含まないssアミノ酸の環状4量体は一般に一次元カラム状集合構造を取ることが知られているため、今回観察された水素結合ネットワークの変化はフッ素原子導入の影響によるものであることが強く示唆された。
|