Research Abstract |
本研究課題では,数理計画に対する構造解析手法の確立と発展を目的として,主に,1,組合せ最適化問題における解のロバスト性の解析,2,グラフ上のサイクル詰添み問題に対する構造解析,という二つの成果を得た.1,ロバスト性とは,組合せ最適化問題の解が持つ構造的性質のひとつであり,マトロイドが持つ貧欲性の自然な拡張である.組合せ最適化問題の解がロバストであるとは,どのようにサイズ制約を付け加えたとしても,その解がサイズ制約付き問題のよい近似解を含むことを言い,サイズ制約が変動しうる状況下でのよい近似解を表している.本研究では,(1)マッチングのロバスト性に対する先行研究の成果を,独立システムと呼ばれるより一般的なクラスに拡張し,先行研究の近似比を改善した.また,(2)独立システムの特殊ケースであるナップサック問題に対して,そのロバスト性を解析し,最大ロバスト比を達成する解を求める効率的なアルゴリズムを提案した.2,サイクル詰込み問題とは,グラフにおいてサイクルを互いに交わらないように詰め込む問題であり,組合せ的行列理論とも関連が深い.本年度は,昨年度に得られた,指定された頂点集合を通るサイクルのみを詰め込む問題に対する Erdos-Posa性をさらに拡張し,(1)長さにパリティ制約があるサイクルの詰め込みに対して,Erdos-Posa性を示し,その構造に基づく固定パラメータアルゴリズムの設計した.また,(2)有向グラフ上での指定された頂点集合を通るサイクル詰込みに対して,1/5整数詰め込みに対するErdos-Posa性を示した.上記の他に,最近,3,線形相補性問題と呼ばれる数理計画に対して,係数行列の疎性という組合せ的性質に着目し,その計算複雑度の解析を明らかにした.
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