Research Abstract |
本研究では,合金設計の力学的な指標として格子不安定性に着目し,それを第一原理計算で非経験的に評価したデータベースを構築するとともに,その結果をモンテカルロシミュレーションにフィードバックし,様々な元素を添加したときの力学特性を予測可能な合金設計シミュレータを構築することを目的とする.第一原理計算による格子不安定性評価では,これまでは周期表に従って様々な単元系についてショットガン的に行ってきたが,今年度は原子炉燃料被覆管材として期待されるODS鋼への適用を想定して,FeマトリックスにY, O, Ti, Alの様々な組み合わせおよび添加サイトでの計算を行い,自由エネルギーの大小,酸素の溶解熱,そして力学特性として弾性係数の行列式の正値性(格子安定性)を明らかにした.さらにこれらの酸化物添加を添加した系について第一原理計算による引張シミュレーションを行い,Fe単体に比べて酸化イットリウムを添加した系の弾性限界が上昇し,Ti, Alを加えた系ではさらに上昇することが格子不安定解析から明らかになった.モンテカルロシミュレーションについては,酸化イットリウムや酸化チタンを平均化粒子として近似し,その原子間ポテンシャルを第一原理計算の自由エネルギー曲線にフィッティングすることで,Fe, YO, TiO2, Alを様々な割合で混合したときの,様々な温度下での析出構造を明らかにすることが可能となった.酸化イットリウムは基本的に大きなクラスターを形成せず,数原子で均等に分布するが酸化チタンは比較的大きなクラスターを形成する.しかし酸化イットリウムの割合が増えるとクラスター化が阻止されクラスターが小さくなることなどが明らかになった.
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