Research Abstract |
本申請課題における着目点は,不飽和地盤内の間隙空気の挙動である。近年,間隙空気の挙動を解明することの重要性に関する議論が増えつつある。地盤内の間隙水圧を計測するためのテンシオメータの計測値は,間隙空気圧を大気圧(=0kPa)と仮定した上で得られる値であるため,間隙空気圧の影響について問われることが多くなってきている。 本年度では,まず,昨年度に実施した一次元円筒土槽試験結果に基づいて,各種条件(底面の境界条件,降雨強度)の違いによる土中の間隙水圧および間隙空気圧の変化傾向に関する考察を行った。これにより,境界条件が非排気,非排水条件の場合,また,降雨強度が大きい場合に間隙空気圧の上昇がみられた。また,テンシオメータで計測された結果への間隙空気圧の影響について考察し,補正を行うことで,テンシオメータで計測される間隙水圧の変化傾向がより明確に表すことができた。また,室内土槽試験を実施し,斜面崩壊発生時の間隙水圧と間隙空気圧の挙動に着目した考察を行った。結果として,室内土槽に盛土を作成した場合,土中の間隙空気圧の上昇は見られたが,データの分析の結果,間隙空気圧計で土中の地下水位を計測したものであることがわかった。最後に,清水寺敷地内斜面における間隙空気圧の長期計測を実施した。本対象斜面では,通常は浅い部分から順に間隙水圧の増加が見られるが,連続雨量7mm,時間雨量3.5mm以上の雨が降ると20,40cmの次に100cm深さの間隙水圧が急増加する現象が見られていた。今回の計測結果により,100cm深さのテンシオメータの値が上昇した後に,間隙空気圧計の値が増加したことから,この現象は,地形や層構成などから上流側からの地下水流による影響であると判断することができた。
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