Research Abstract |
今年度は,まず,世帯単位の意思決定に関する既存研究のレビューを行った,その結果,世帯単位の効用関数を設定し,世帯効用最大化問題を定式化している研究,世帯内に家長が存在し,世帯の意思決定に大きな影響を及ぼすことを前提とする研究,協力ゲーム理論を用いた研究非協力ゲーム理論を用いた研究等があることがわかった.そこで,これらの既存研究をベースとして,父,母,子から構成される核家族の世帯交通行動を表現するためのモデルの定式化を行った. 次に,スリランカ南部の農村部であるHanbantota地区を対象として行った,病院等への医療施設への交通行動に関する世帯調査データをもとに,特に医療サービスの選択行動に着目して,世帯内の各構成員の過去の医療施設の選択行動を,病気の種類,個人属性,入手可能な交通手段,医療機関のサービス水準等のデータを用いて分析した,ここでは,病気のタイプ別の病気発生,医療機関の選択ならびに医療機関までの移動手段の選択を同時に考慮できるネスティッド・ロジットモデルを推定した.その結果,10歳未満の子供のいる世帯では,循環器系ならびに心臓に関わる病気に罹る可能性が高いこと,女性は,ぜんそくなどの呼吸器系の病気に罹る可能性が高いこと,医療機関へのアクセス交通時間価値は,現地の平均世帯の賃金率よりもかなり高いことなどが明らかとなった.また,通院目的の交通発生頻度を推定する回帰モデルを構築した.その上で,これらの推定されたモデルを用いて,病院までの交通サービスが改善された場合の経済的便益をケーススタディとして試算した.
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