Research Abstract |
本研究は,北海道の美唄市を対象に,(1)炭鉱住宅および炭鉱住宅地という「固有の住文化」が環境形成された歴史的経緯の整理,(2)炭鉱住宅地にいまなお居住環境が形成している全貌を,可能な限り把握・整理し,居住者が持続的に居住している状況と方法から,住み続けられている居住方法(持続居住性)について探った。とりわけ三菱美唄炭鉱と三井美唄炭鉱の東美唄地区,落合地区,東明地区,南美唄地区を対象に分析した。(1)三菱美唄炭鉱は,主に東美唄から落合にかけて炭鉱住宅を建設し住宅地の範囲としては比較的大きい。三井美唄炭鉱は南美唄地区にて住宅地を形成するにあたり,"碁盤の目"の都市計画を採用や住環境を向上させるための条件を付けていたために,南美唄地区のほうが計画的に炭鉱住宅や住宅地を形成させていたことが明かとなった。(2)炭鉱住宅は時代が経過するにつれ住宅の質も良い。職員住宅と鉱員住宅がそれぞれ建設されているが,職員住宅のほうが圧倒的に質が良く,鉱員住宅は粗末なものであった。(3)現在において残存している炭鉱住宅の住戸形態は,建設当時の1棟2戸建も多いが,1棟1戸建(1世帯居住)として居住している場合も多い。(4)住戸個々の改修は,主に寒さ対応により窓などを主に改修している。しかし.職員地区においては炭鉱地区という愛着から,いまだ「板張り」を存続させ炭鉱住宅地のおもむきを残すように配慮している状況も読み取れた。(5)炭鉱住戸は,点々と残存している場合やいくつかの群として残存している場合があるが,住戸密集度が高い地域は改修などの住環境改善意識が高く,近隣居住者の住環境整備に触発されるものと考えられる。(6)廃屋は150戸ほど残存しているが,その要因は,「住戸から離れる際に解体費用がかかること」や「解体せずに離れていく者や,住戸を残したまま地代のみを払う者」もおり,廃屋は今後も増えていく一方であると考えられる。しかし,炭鉱住宅区に愛着をもつ居住者においては,住戸と土地を購入して他者に賃貸しており,居住者自身で廃屋を無くし持続的に居住環境を維持していることも明かとなった。
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