Research Abstract |
平成21年度は,温度傾斜試料による熱誘起マルテンサイト相(α'相)の成長機の明を中心に研究を行った.Fe-30mass%Ni合金を用いて,試料内部で冷却温度に勾配を持たせて作製した温度傾斜試料を作製した.その結果,一つの試料内部で冷却温度が連続的に変化した試料を作製することに成功した.その試料に対して後方散乱電子線回折法(EBSD)にて結晶方位解析を行った結果,α'相の形態は,冷却温度が高い部分から低い部分に向けてラス状,バタフライ状,レンズ状の順に変化した.また,その形態変化は,連続的に変化するのでなく不連続であることが分かった.しかし,α'相の体積分率が多く,α'相とオーステナイト相(γ相)との結晶方位関係の変化が調査できていない.平成22年度は,試料の組成を変更し,α'相の形態変化および結晶方位関係の変化について継続して調査を進め,α'相とγ相の成長機構を検討する.さらに,加工誘起α'相の成長機構を解明する研究の予備調査として,引張試験によるα'相の成長挙動をその場EBSD観察にて調査した.その結果,引張変形によってバタフライ状α'相が成長する場合,α'相とγ相の結晶方位関係はG-T関係からK-S関係へと変化し,その形態がラス状α'相に近くなることを明らかにした.平成22年度は,ひずみ傾斜試料を作製し,ひずみ量とα'相の特徴との関係を調べることで,加工誘起α'相の成長挙動を明らかにする.さらに,本研究では,鉄合金の初期組織が摩耗変質層の形成挙動に及ぼす影響をFe-Ni合金を用いて調査した.鉄合金に摩耗が生じると摩耗表面に局所的な巨大ひずみが生じ,微細な組織を有する変質層が形成する.本研究結果から,形成した摩耗変質層は,摩耗中に生じる逆変態の発生によって,摩耗前の初期組織に関わらずγ相単相になることが分かった.
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