2010 Fiscal Year Annual Research Report
連続傾斜組織を有する鉄鋼材料を利用したマルテンサイト相成長機構の究明
Project/Area Number |
21760553
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 尚 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (50402649)
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Keywords | 相変態 / マルテンサイト / EBSD / 鉄鋼材料 / 傾斜機能材料 / 結晶方位関係 / 摩擦摩耗 / 巨大ひずみ |
Research Abstract |
本研究では,温度傾斜試料を用いた熱誘起マルテンサイト(α')相の成長挙動およびひずみ傾斜試料を用いた加工誘起α'相の成長挙動を検討した.前者の研究では,Fe-30%Ni試料内部の冷却温度に勾配を持たせることで温度傾斜試料を作製した.冷却温度が高い領域ではラス状およびバタフライ状α'相が多く分布していた.冷却温度が低い領域では,温度が最も低い部分でバタフライ状α'相が多く,それよりも高い温度の部分でレンズ状α'相が多く分布していた.この結果から,温度傾斜試料で形成するα'相は冷却温度および冷却速度に起因する変態の駆動力に依存する事を見出した.しかし,本手法ではα'相成長挙動の検討が困難である.そこで,水冷で生成したバタフライ状α'相を組織観察に供した後,その試料を約-20℃の冷却アルコールでサブゼロ処理に供することでα'相を成長させ,その組織変化を調べた.バタフライ状α'相は幅方向に成長し,界面におけるオーステナイト(γ)相との結晶方立関係がK-S関係からN-W関係へと変化した.これはバタフライ状α'相の界面性質がバタフライ状からレンズ状に近い性質へ変化した事を示す.よって,熱誘起α'相の性質は成長中の温度に影響を受ける知見を見出した.後者の研究では,Fe-30%Ni合金にてゲージ部がくさび形状を有する引張試験片を作製し,それを引張試験に供することでひずみ傾斜試料を作製した.しかし,その試料内部におけるひずみ量の変化が小さいため,表面巨大ひずみ加工法を用いてひずみ傾斜試料を作製した.その結果,加工にてバタフライ状α'相からラス状α'相への形態変化が生じた.この現象は前者の研究結果と一致し,α'相の性質は成長中の温度にも依存する知見を見出した.同時に加工表面近傍の相分布を調べた結果,表面巨大ひずみ加工による加工表面近傍ではα'相からγ相への逆変態が生じる事も明らかとなった.
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