2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノワイヤーを介した微生物間シグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
21770015
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下山 武文 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (10534878)
|
Keywords | 応用微生物 / シグナル伝達 / 発酵 / 微生物間相互作用 / 微生物燃料電池 |
Research Abstract |
本研究は,発酵共生細菌とメタン生成古細菌との間で,共生培養時に観察されるナノワイヤーが微生物間のシグナル伝達機能を担っていると考え,この発酵共生細菌が生産するナノワイヤーの機能を明らかにすることを目的とした.特に本年度はシグナルのレセプタータンパク質として予想されるメタン菌の膜タンパク質についての電子伝達機構の検討を行った.ナノワイヤーの存在を感知するのはメタン生成古細菌の表面タンパク質であると考え,メタン生成古細菌を大量培養し,ナノワイヤーと相互作用するタンパク質の生成を行った.この結果,シグナル伝達に関与すると予想される複数の関連し合ったタンパク質が同定された.本研究課題のように,異種微生物間で直接電子伝達をしている現象は観察されていないため,この電子伝達に関与する膜タンパク質の機能解明は大変意義深い,この結果を国際会議(FEMS Congress)にて発表した. またナノワイヤーを介した電子伝達機構において,電子受容体が微生物ではなく導電性物質であった場合,電子移動を電流としてとらえることができる.この電流は次世代エネルギー生産プロセスである微生物燃料電池のメカニズム解明に大きく寄与する.本年度は微生物燃料電池における電流産生メカニズムに関連し,電流生産微生物の新たな提案に関する論文を1報発表した.このナノワイヤーを介した電子移動は,1対1の微生物間の電子移動のみならず,集団としての電子移動の現象をとらえ,エネルギー生産に利用する先駆けとなる研究結果であると考える.またこの電流産生の現象から,微生物の生産するナノワイヤーは生体由来の導電性材料として応用できる可能性が示唆された.
|