2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770091
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
瀧本 岳 Toho University, 理学部, 講師 (90453852)
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Keywords | 進化生物学 / 数理モデル / ギルド内捕食 / 生態系サイズ / 食物連鎖長 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ギルド内捕食の進化に注目して、食物網構造の環境条件依存性を理論的に解明することである。それを基に、食物連鎖長の進化的決定機構を明らかにし、適応放散に伴う高次栄養段階の進化条件を探ることを目指している。平成21年度は、主に次の3つの研究を行った。 1. ギルド内捕食系の個体ベースシミュレーションモデルの構築と、その準備解析:個体ベースシミュレーションモデルは、連続時間・連続空間上で動作するものと、離散時間・離散空間上で動作するものの2種類を開発した。微分方程式モデルを直接移植するには、連続時間・連続空間上で動作する個体ベースモデルが適しているが、シミュレーションに時間がかかりすぎることが判明した。そこで離散時間・離散空間上で動作する個体ベースモデルを開発し、進化プロセスを組み込まずに、食物連鎖長の環境要因依存性を調べた。その結果、微分方程式モデルから示唆されたとおり、一次生産性や撹乱よりも生態系サイズの持つ効果が安定して現れることを見いだした。今後これに進化プロセスを組み込む。 2.進化に対して安定な食物網構造の解明:閉鎖群集内では安定な食物網構造が進化しないが、メタ群集構造の下では、エネルギー流の速い食物連鎖と遅い食物連鎖が連結したような非対称性のある食物網構造が安定に進化することが示唆された。また、そのメカニズムとして、メタ群集構造が進化的自殺(evolutionary suicide)を防ぐ効果があることを見いだした。 3. 外来生物や再導入個体群に係わる食物網構造の変化に関する野外研究:本理論研究では野外の実証研究との連携を目指しているが、食物網構造の進化を実際に観察するのは難しい。そこで、外来生物の除去がもたらす食物網構造の変化や、食物網構造が再導入個体群の定着可能性に与える影響について、野外研究者との共同研究を開始した。
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