2009 Fiscal Year Annual Research Report
ジアシルグリセロールキナーゼηによる細胞増殖制御機構の解明
Project/Area Number |
21770147
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
安田 智 National Institute of Health Sciences, 遺伝子細胞医薬部, 研究員 (20381262)
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Keywords | シグナル伝達 / 脂質 / 酵素 |
Research Abstract |
ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は、ジアシルグリセロールをリン酸化し、ボスファチジン酸に変換する酵素である。哺乳動物において、DGKには10種類のアイソザイムが存在することが報告されており、保有する機能ドメインの違いから5つのサブグループに分類される。DGKηはPHドメインと分離した触媒部位を有するII型DGKに属するが、DGKηの生理的な役割はほとんど不明であった。HeLa細胞においてDGKηの発現をsiRNAにより抑制したところ、増殖が抑制されることが見出された。DGKηの細胞増殖制御機構を解明するため、細胞増殖において重要な役割を果たす上皮増殖因子(EGF)受容体シグナルにおけるDGKηの関与を検討した。DGKηの発現を抑制した細胞では、EGF刺激に依存的なMEK1/2およびERK1/2のリン酸化が低下していた。これらことは、DGKηは古典的MAPK経路であるERK経路に対して促進的に働くことを示している。Rasの活性化状態はDGKηの影響を受けなかったため、DGKηによるRafキナーゼ活性の制御が考えられた。興味深いことに、DGKηの発現抑制はEGF依存的なC-Rafキナーゼ活性を顕著に阻害したが、B-Rafキナーゼ活性には影響を及ぼさなかった。Ras活性依存的にC-RafはB-Rafとヘテロ二量体を形成し、それらのヘテロ二量体は強いRafキナーゼ活性を有することが、近年報告されている。そこでDGKηのB-Raf/C-Rafヘテロ二量体形成への影響を検討したところ、DGKηの発現を抑制した細胞においては、EGF依存的なB-RafとC-Rafの相互作用が抑制された。以上のことから、DGKηはB-Raf/C-Raf二量体形成を促進し、ERK経路を活性化し、その結果、細胞増殖を制御することが示唆された。
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Research Products
(4 results)