2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770197
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
小川 英知 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究センターバイオICTグループ, 専攻研究員 (20370132)
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Keywords | 転写因子 / 核内受容体 / クロマチン / SUMO化修飾 / 転写制御 / 核内構造 |
Research Abstract |
遺伝情報を正確に読みとるために転写機構は多段階の周期的なステップを経て厳密な制御がなされていると考えられる。我々は、この分子機構解明のため、核内受容体が転写活性化過程において一過的に生じる転写抑制活性に着目した。これまでの我々の研究から、この一過的な転写抑制機構に転写因子の翻訳後修飾であるSUMO化修飾が関与していることが明らかとなり、このSUMO化による抑制機構の解明を目的として研究を行ってきた。生殖腺の分化に必至な核内受容体Ad4BPがSUMO化依存的に転写抑制を受けることから、このAd4BPのSUMO化に特異的に結合する複合体の精製を試み、ARIP4およびARIP4を含む核内複合体の同定に成功した。この複合体の構成因子の解析より、ARIP4には約60kDaのタンパク質p60とダウン症の責任領域に存在する遺伝子DyrK1Aが特異的に結合することが見出された。p60はARIP4のATPase活性を促進すると共に転写抑制活性を促進し、DyrK1AはARIP4の発現量依存的にAd4BPの活性化を双方向に調節することが判明した。これらの複合体を分子レベルで観察するために、原子間力顕微鏡を用いてARIP4とp60の複合体を観察した。興味深いことにこれらの相互作用はATP非依存的に見られるが、ATP存在下では、この複合体が集積した大きな集合体を形成することが明らかとなった。p60は特定の薬剤によって核内で集積する染色パターンが観察されることからも、これらの結果はARIP4の複合体がATP依存的に集合体を形成し、核内で存在形態を変化させることで転写調節を行っていることを意味する。これらの成果はARIP4複合体形成機構とその転写制御機構への影響についてクロマチンの動態を含め解析をすすめる上で重要な知見であり、今後のクロマチンレベルでの新規転写調節機構の解明につながると考えている。
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Research Products
(8 results)