2009 Fiscal Year Annual Research Report
アザミウマにおける脱皮・変態のホルモンによる制御機構解明
Project/Area Number |
21780046
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水口 智江可 Nagoya University, 大学院・生命農学研究科, 助教 (90509134)
|
Keywords | 昆虫 / 幼若ホルモン / アザミウマ / broad-complex |
Research Abstract |
アザミウマ目の昆虫は、蛹の過程を経ずに幼虫が成虫へと変態する「不完全変態昆虫」として分類されているものの、成虫になる前にほとんど動かない「蛹のような時期」が2期~3期存在する。これは他のどの昆虫種とも異なったユニークな変態様式である。本研究では、一般に昆虫において変態を抑制し幼虫状態の維持に関与する幼若ホルモン(JH)が、アザミウマの脱皮・変態を制御する分子機構を明らかにし、アザミウマの「蛹期」の実体を解明することを目的とした。平成21年度の研究は、「蛹期」が2期存在するミカンキイロアザミウマを用いて行った。その成果は以下のようにまとめられる。 1. 他種昆虫で蛹特異的な転写因子として知られているbroad-complex (br)の発現時期を詳細に調べたところ、胚発生後期、2齢幼虫期、第1蛹期に強く発現することが判明した。これは他の不完全変態昆虫と完全変態昆虫で報告されているパターンの両方の特徴を併せ持つものであると考えられる。 2. 他種昆虫での実施例を参考にして、RNAi法によるbr遺伝子のノックダウンを試みたが、ノックダウンの効率が低く、この遺伝子の機能の解明には至らなかった。 3. アザミウマは体が小さいため、機器分析法による体内JHの定量が困難である。そこで各成育段階の個体にJH様活性物質(JHM)を投与し変態抑制効果を調べたところ、第2蛹から成虫への変態が阻害された。したがって幼虫期から第1蜻期までは体内JH濃度が高く、第2蛹期に減少すると推定された。 4. 第1蛹にJHMを投与して成虫化を抑制した場合、蛹特異的転写因子-brの発現時期の延長がみられた。これは他の不完全変態昆虫や完全変態昆虫にJHMを投与し成虫化を抑制した場合にもみられる現象であることから、JHによるbrを介した変態制御機構がアザミウマでも保存されていることが示された。
|
Research Products
(4 results)