2011 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌撹乱法による昆虫ホルモン情報伝達ネットワークの解明
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21780047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野 肇 京都大学, 大学院・農学研究科, 助教 (70452282)
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Keywords | 昆虫 / 生理活性 / 生体分子 / 発生・分化 / シグナル伝達 / ショウジョウバエ / 脱皮ホルモン / 幼若ホルモン |
Research Abstract |
昆虫では前胸腺で生合成されたエクダイソンが分泌されることによって、脱皮変態が引き起こされる。一方で、発育の変遷過程における個々のエクジステロイドタイターの大きさは非常に異なっており、エクジステロイドの分泌時期やタイターの大きさが発生プログラムの決定に関与していると考えられる。この仮説を検証するために、ショウジョウバエの前胸腺で任意の時期にエクジステロイドを不活性化する方法の確立を試みた。 方法は、プロゲステロン類縁体(Pr)を与えた時だけ、前胸腺でエクジステロイド不活性化酵素CYP18Aの遺伝子が発現するショウジョウバエ系統を確立し、発育を観察した。 2齢幼虫に高濃度のPrを摂取させると、脱皮できずに死亡したが、低濃度のPrを摂取させると3齢幼虫へと脱皮せず蛹化する個体(早熟蛹)が認められた。すなわち、低濃度のPrの摂取により低レベルでCYP18Aが発現したため分泌された一部のエクジステロイドが不活性化したと考えられる。そして、早熟蛹の中には羽化直前の成虫まで発育を遂げた。これより、2齢から3齢への脱皮が起こらなくても成虫への発育のプログラムが実行されることが示された。脱皮のプログラムと変態のプログラムはそれぞれ独立していると考えられる。 3齢幼虫の初期にエクジステロイドの不活性化を行った場合、ほとんどの幼虫は餌から離れて蛹化場所を探すワンダリング行動を示した後に死亡した。これまで、ワンダリング行動はエクジステロイドの分泌によって引き起こされると考えられていたが、本研究により、他の要因によって引き起こされると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていた時期特異的にホルモンタイターを操作できるショウジョウバエ系統を確立して、解析を進めることができている。さらに、エクジステロイドの生合成経路に関する知見を得て、論文発表を行った。これより、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
エクジステロイドが不活性化された幼虫の表現型について解析を行った。今後、定量的な解析を進めて、エクジステロイドの不活性化と表現型との関係を解析する。具体的には、エクジステロイド動態と不活性化酵素の発現量の解析をおこなう。 ショウジョウバエの発育の解析において3齢幼虫の発育段階をきちんとトレースすることが非常に重要であるとともに困難であることが問題となる。その対応策として以下のようにsgs-GFP系統の利用を考えている。3齢初期のエクジステロイド分泌に応答して接着タンパクであるSgs3が発現することが明らかにされている。これよりSgs3発現時にGFPタンパクの蛍光が発現する系統のショウジョウバエを利用して、3齢期の発育ステージをトレースしながら3齢期でのエクジステロイドの役割の解析を行う。
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Research Products
(8 results)