2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21780055
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柴垣 奈佳子 大阪大学, 工学研究科, 寄附講座准教授 (50525152)
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Keywords | バイオディーゼル / ジャトロファ / 乾燥ストレス / 形質転換 |
Research Abstract |
世界中で、劣悪な環境においても生育できる油糧植物として栽培が広がっているにも関わらず、科学的知見の未だに乏しい植物Jatropha curcas L.(ジャトロファ)について、水分の不足した環境におかれるとどのような生理的応答を示すかを明らかにすることを目的とした研究を行った。まず、気孔の開度、葉の水分含量、タンパク質・アブシジン酸含量などの生理学的応答のタイミングを明らかにした。次に、GC-TOFMSを用いて、一次代謝産物の蓄積の、乾燥ストレスによる変化を調べた。さらに、代謝産物の蓄積の変化から示唆される各代謝経路の活性の変化を、転写産物解析により確認した。これらの結果から、土壌の水分含量が低下すると速やかに気孔を閉じ、光合成活性の低下により主な糖の蓄積が低下する一方で、ラムノースなどの糖やグリシンベタインの蓄積を増加させ、葉の水分保持能力が上昇することが分かった。また芳香族アミノ酸や分岐鎖アミノ酸なども乾燥条件下で顕著に増加し、これらの蓄積が過剰な光エネルギーによる酸化的障害の緩和に働いている可能性が示唆された。 これらの結果は、降水量の少ない土地でも生産性の高いジャトロファの創出を目的とした遺伝子改変のための有効なストラテジーを示唆するが、遺伝子改変のために必要となる、ジャトロファの形質転換法の高効率化を目的とした研究も同時に進めてきた。汎用度の高い方法としてアグロバクテリウムを用いた形質転換法が用いられるが、アグロバクテリウムの系統間でのジャトロファへの感染のしやすさには有意な差がないこと、また、光条件も感染に有意な差を与えないことなどを明らかにした。また、減圧湿潤法による葉全体へのアグロバクテリウムの感染を用いることにより、形質転換法の操作の中で、組織培養以前の過程を簡略化することができた。
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Research Products
(12 results)