2010 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母におけるNADP(H)合成および分解系の制御機構
Project/Area Number |
21780069
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河井 重幸 京都大学, 農学研究科, 助教 (00303909)
|
Keywords | NADHキナーゼ / NADキナーゼ / ミトコンドリア / NADPH / NADH / 出芽酵母 / 結核菌 / 真菌 |
Research Abstract |
NAD(H)は異化反応における電子運搬体などとして重要であり、NADP(H)は主に生合成反応および酸化ストレスからの防御反応における電子運搬体として機能する。NAD(H)とNADP(H)の機能の違いとその諸機能が生命現象に与えるインパクトの大きさから、NADP(H)の合成および分解系の理解は重要である。本研究では、特に出芽酵母ミトコンドリアにおけるNADP(H)合成系で重要な役割を果たすNADHキナーゼ(NADHK)Pos5の立体構造を決定し、Pos5がNADキナーゼ(NADK)活性よりも高いNADHK活性を示す構造要因の解明を行った。Pos5-NADH複合体の立体構造を決定し、結核菌由来NADK (Ppnk)-NAD複合体(立体構造決定済み)との詳細な比較解析を通じて、Pos5のArg293に起因するNADH結合部位の表面電荷の差異が当該要因の一つではないかとの仮説をたてた。本Arg293は、PpnkおよびヒトNADKの立体構造上では各々His226ならびにHis351に対応していた。なお、真菌NADKはPos5ホモログタンパク質とUtr1ホモログタンパク質に分類されるが、Pos5 Arg293は真菌Pos5ホモログタンパク質の一次構造中ではArgとして、Ppnk His226とヒトNADK His351は真菌Utr1ホモログタンパク質の一次構造中ではHisとして保存されていた(以下、かかる特徴的な保存様式をPos5ホモログタンパク質特異的な保存と称する)。なお、Pos5のNADH結合部位を構成する殆どのアミノ酸残基は、PpnkおよびヒトNADKのそれと立体構造上で保存されていた。Pos5のArg293をHis残基に置換したPos5 R293H精製酵素の動力学的パラメーターを決定したところ、Pos5 R293HのNADに対するK_m[K_m (NAD)]が低下したことから、確かに当該Arg293は野生型Pos5の低いNADK活性[高いK_m (NAD)]の要因の一つと推察された。一方、V_<max>に関しては、Pos5 R293HのV_<max> (NADH)が野生型Pos5のそれと比べて約50%減少した。以上の結果から、Pos5のArg293はPos5の高いNADHK活性の構造要因の一つであると考えられた。また、出芽酵母がNAD生合成前駆体キノリン酸を細胞外へ分泌すること、および本キノリン酸の再利用が生理的に重要であることなども明らかにした。
|