2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21780133
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 恭子 Nihon University, 生物資源科学部, 講師 (70366574)
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Keywords | 腸管免疫系 / 腸内細菌 / マスト細胞 / 上皮細胞 / 炎症反応 |
Research Abstract |
腸内の恒常性の維持には、生体最大の免疫系である腸管免疫系と腸管に大量に生息する腸内細菌から成る腸共生系が重要な役割を果たす。そこで、食品の腸共生系に対する調節作用を利用して腸管における炎症反応を制御することを目的とし、腸管の(1)マスト細胞、(2)上皮細胞と腸内共生菌との相互作用の分子機構について以下の解析を行った。 1.腸内共生菌がマスト細胞の最終成熟過程に及ぼす影響を明らかにするため、Lactobacillus及びBacteroides菌体をマウス骨髄由来マスト細胞のin vivo分化系に添加し、顆粒形成、及び細胞表面受容体や転写因子等の発現パターンを評価した。その結果、Lactobacillusの添加により、顆粒形成の抑制、転写因子C/EBPαの発現の増大が認められた。一方、Toll-like receptor(TLR)2を介した成熟マスト細胞への作用に関して、マスト細胞のアレルギー炎症反応の抑制に関与すると考えられる分子量約70kDaの分子の存在を明らかにした。 2.マウスの小腸上皮細胞及び脾臓細胞を調製し、TLR4遺伝子のメチル化およびmRNA発現量を解析した結果、腸管上皮細胞株において観察されたエピジェネティックな機構によるTLR4遺伝子の転写抑制がin vivoにおいても機能していることが示唆された。また、TLRからのシグナルを抑制するTollip遺伝子の転写制御因子として同定したElf-1が翻訳後修飾を受けること、その修飾効率が腸管上皮細胞株と単球株で異なることが示された。これらの特異的な機構により菌体の認識に関わる分子の発現が適切に制御され、腸管上皮細胞は腸内共生菌に過剰に応答せず、腸共生系の恒常性維持に貢献すると考えられる。 1および2で明らかになった分子機構は、腸共生系の恒常性の破綻に起因する炎症反応を食品により制御するための有用なターゲットとなる可能性が期待される。
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Research Products
(31 results)