2010 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫体表付着花粉の直接遺伝解析による熱帯林一斉開花における送粉システムの解明
Project/Area Number |
21780152
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
近藤 俊明 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教 (40391106)
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Keywords | 一斉開花 / 熱帯雨林 / 送粉共生系 / マイクロサテライト / 森林資源管理 / 花粉一粒 |
Research Abstract |
東南アジアの熱帯雨林では、「一斉開花」と呼ばれる不定期に生じる集団開花現象を通して種子の生産が行なわれる。こうした多様な植物種による同調的な開花は膨大な量の送粉者を必要とするが、不定期に生じる開花は数年にわたる非開花期の餌資源の減少によって、花資源を報酬として花粉の運搬を担う送粉者を減少させる。そのため、どのようなシステムによってこの送粉者不足を補い、種子の大量生産を行なっているのか?といった問題は、熱帯林における長い間未解決のままの大きな疑問の一つであった。本申請課題は、新たに開発した花粉一粒の直接遺伝解析を用いて、個々の訪花昆虫に付着した花粉の遺伝的組成を評価することで、一斉開花時の送粉システムを明らかにすることを目的としたものである。 21年度は、主要な送粉者と考えられてきたアザミウマの体表付着花粉について遺伝解析を行い、アザミウマが発芽率の低い自殖種子の生産にしか貢献していないこと明らかにした。本年度、同様の手法を用いて、アザミウマを捕食するカメムシ類はじめとする他の訪花昆虫種の送粉貢献度を評価した結果、カメムシ類の体表付着花粉において高い遺伝的多様性が確認できた。すなわち、東南アジアの熱帯雨林では、アザミウマを中心とした食物連鎖網に基盤をなす他殖種子の生産によって、森林の更新が行われていることが示唆された。 最終年度では、実際に生産された種子や生存実生の遺伝解析によって熱帯林構成樹種における近交弱勢の影響を明らかにすることで、森林の更新に寄与した送粉者や送粉システムの解明を行う予定である。得られる成果は、森林伐採が止まない熱帯林において、「植物-送粉者相互作用」の保全の観点から、持続的な熱帯林管理へ向けた新たな指標を提示するものであると考える。
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Research Products
(2 results)