2009 Fiscal Year Annual Research Report
食料危機における地域経済統合の食料安全保障上の有効性・問題点に関する研究
Project/Area Number |
21780212
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
小島 泰友 Tokyo University of Agriculture, 国際食料情報学部, 准教授 (90508235)
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Keywords | 食料危機 / 貿易構造 / EU / 東欧新興国 / 農業政策 / トウモロコシ / 地域経済統合 / 食料安全保障 |
Research Abstract |
2007~08年の食料危機における貿易構造の変化について、統計データを用いて分析を行った。以下、トウモロコシに関する研究成果の概要とその重要性について説明する。 FAOSTATによれば、2007年度の世界におけるトウモロコシ生産量は90年年代後半から2000年代半ばまでの平均値より25%増加している。その増加率の50%はアメリカでの増産が寄与したが、EUにおける生産量の低下(約26%)は、世界の農業主要国・地域のなかでも唯一、マイナス7%もの寄与率で増産の足かせとなった。その背景として、EU加盟を目指し農業改革を進めてきた東欧新興国(ルーマニアやハンガリー)における生産量の低下が挙げられる。 こうした状況の中、EUの域内輸入が増加したが、2007年にスペインとポルトガルはEU域外から、特にブラジルやアルゼンチンからトウモロコシ輸入を急増させた。その結果、1990年代後半から約20~30%で推移していたEUの域外輸入比率は、2007~2008年では45%まで上昇した。2007年度の世界におけるトウモロコシ輸入量(EU域内貿易含む)は90年年代後半から2000年代半ばまでの平均値より約3割増加したが、それに対するEU輸入の寄与率は4割を超える水準であり(含まない場合、4割弱)、EUへの輸出が急増したことがわかる(このほか、寄与率の大きい国々は、メキシコ10%前後、イラン5%強、コロンビア5%前後、なお旧ソ連邦・インドはほぼ0%である)。 食料危機の原因として、天候不良、石油価格の高騰、バイオエタノール、新興経済国による需要の増加、輸出規制等が挙げられるが、それらに加えて、その背景の一部としてEU統合をめぐる新興国の農業政策やそれに伴う既存のEU加盟国の貿易動向に注目することが重要である。今後、食料危機における地域経済統合の食料安全保障上の有効性・問題点という観点から、これらの研究成果をまとめていく予定である。
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