Research Abstract |
1.ホンモンジゴケの無菌培養系の確立 自然界から採取したホンモンジゴケの茎葉体を用いて,エタノールと次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度と殺菌時間を検討することによって,無菌的な原糸体を得ることに成功した. (1)原糸体の成長について 殺菌置床後,約3~4週間で無菌的な原糸体を得ることができたが,その生育速度は非常に遅く,直径3cmほどの放射状に伸長するまでに約8週間かかることが分かった.さらに約1cm角に切り分けて継代すると,すぐに新しい原糸体の伸長が見られ,約2日後に伸長していないものは,その後も伸長せず枯死する様子が見られた.継代後は約1ヶ月で直径3cmほどに伸長した.このことから,殺菌直後ではなく,原糸体として継代を経たものを実験材料として使用する方が,成長も安定しており,より均一な材料であるため,比較実験に適していると考えられた. (2)大量培養への試み 固体培地における静置培養よりも大量に原糸体を培養するために,液体培養を試みた.継代時の量は,固体培地の時よりも多くなければ枯死してしまうことが分かった.また培地の種類や糖の添加量により,褐変化したり,濃緑色化する様子が見られ,今後,銅耐性との関連を調査したい. 2.無菌的な原糸体を用いた銅濃度の違いによる生育への影響 1つの茎葉体から伸長した原糸体を用いることにより,材料の条件を均一化して,銅濃度の違い(0ppm,3ppm,30ppm,100ppm)による生育への影響を調査した.その結果,銅濃度が高くなるにつれて,原糸体の伸長は抑えられる傾向が見られた.ホンモンジゴケは好銅性と言われてきたが,銅濃度Oppmの培地においてもよく伸長する様子がみられた. 本研究において,無菌培養系を用いることにより,外的環境の制御が可能となり,ホンモンジゴケの真の性質を解明することができるようになった.この無菌培養技術は,他のコケ植物等にも有効であると考えられ,多くの研究に貢献しうるものである.
|